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環境に目を向けることは「自分を守ること」にもつながる。環境省・森里川海アンバサダー奥村奈津美さんに学ぶ新しい防災のスタイル

線状降水帯やスーパー台風など、かつてない被害の自然災害が多発する日本。あらゆる地域が被災したことで、これまで以上に備えることが求められています。また、これらの激甚な災害を引き起こす原因となっている環境破壊も改善の一途というわけにはいきません。ニュースなどで現状を耳にし、行動したいと思っているものの、どう行動していいかわからない人も多いこの問題について、防災啓発活動と環境問題に取り組む奥村奈津美さんに詳しく教えていただきました。

奥村奈津美

広島、仙台で8年間、地方局アナウンサーとして活動後、東京に戻り2013年からフリーアナウンサーに。人気番組のリポーターや報道番組のキャスターを務める。東日本大震災を仙台の放送局のアナウンサーとして経験。防災の大切さを痛感し、防災啓発活動に携わるようになる。現在は、環境省 森里川海プロジェクトアンバサダーとしても活動し、「防災×気候変動」をテーマに取材、発信している。

一番大切なのは「正しい知識」を持つこと

―― 奥村さんは防災×環境活動として「オンライン防災訓練」などユニークな取り組みをされていますね

オンライン講座を始めたのは、2020年4月に最初の緊急事態宣言が発令されて自宅で過ごすことを余儀なくされた時期に緊急地震速報が続いて。「おうちにいなくちゃいけないのに怖いよ。どうしたらいいの?」とママ友たちが不安な気持ちで過ごしていたのがきっかけです。その時に「防災に詳しいなら色々教えて!」と言われて、オンラインの防災講座だったらやれるんじゃないかと思って、スタートしました。
 
手探りでしたが毎週やっていました。気がついたら1年たっていて(笑)最初は20〜30人くらいの参加者だったのですが、いつの間にか参加者も増えて…。多くの要望もいただくようになってきたので、テーマに沿った専門家の先生にご協力いただきながら定期的に開催するようになりました。

―― 講座はどんな内容なのですか?

例えば、新生児、アレルギーや障がいがあるお子さんへの備えとか、九州で起きた水害をきっかけに水害についての備えを考えてみようとか、その時々の皆さんの関心ごとに寄り添う形でテーマを決めてやっています。今はYouTubeにもたくさんアーカイブがありますので、興味があるテーマを見てもらえたらうれしいです。

―― 福祉防災についてのお話もありますね

新生児もそうですし、高齢者や障がいのある方などの場合、自分で走ったり動いたりできないケースがあります。事前に「誰がどのように避難させるか」を考えておかないと助けに行くこともできません。福祉防災は一人でも多くの命を助けるために大切なことですから、興味を持ってみてもらえればと思います。

――いざというときのために考えておく、備えておくわけですね。

災害に備えるというと「防災グッズを揃える」とイメージされる方が多いと思うんですけど、物だけあっても命は守れません。一番大切なのは「正しい知識」なんですよ。どんなリスクがあるのか。いざという時、自分がどう行動するべきかを知っておくことが命を守ることにつながっていきます。そして知識や思いを共有しておくこと。地域や自治体、施設や幼稚園など、あらゆるところで議論して備えておくことが、いざという時に誰かを守ることになるんだと思います。

環境問題を通して防災に目を向け、防災を通して環境問題を知る

―― 奥村さんは環境アンバサダーとしても活動されていますね

環境省の取組事例を紹介した「ミライアイズ」という動画のナレーションを担当したことでご縁をいただきました。私が環境に興味を持つようになったのは、土砂災害の現場に入ったことがきっかけです。その凄まじさに衝撃を受け、原因として、林業の衰退などで山の管理が行き届いていないこと、さらに、気候変動の影響で雨の降り方が変わってしまい、山が保水できず、被害が拡大している、と知りました。そんな時に「アンバサダーとして一緒に環境問題に取り組んでいかないか」とお声がけをいただきました。今は「環境と防災をセット」にしてその重要性を伝えることで、多くの人が地球にもっと目を向けてくれたらいいなと思っています。

―― 正直、環境問題と防災がつながっているイメージはないのですが

ほとんどの人がそうだと思います。地球温暖化が叫ばれてずいぶん経ちますけど、まだそれほど問題ないと思っている人は多いと思うんです。しかし、人や社会のシステムが環境に悪影響を与えたことで地球環境が大きく変わったのは事実です。気温は上がり、1時間に100ミリを超える雨が降る頻度が増し、台風は海水温も上がったことで威力を増しやすくなっている。コンクリートで覆われた都会は治水することができず、手入れされない山は崩れる…。全てつながっているんですよ。

―― そう考えると、防災だけでなく環境問題にも取り組まなくてはいけませんね

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書によると、今後は地球温暖化に伴い、豪雨災害や猛暑のリスクが更に高まる可能性が指摘されています。 今の状況はもう「気候変動」ではなく「気候危機」なんです。ですから、いざと言う時に備えつつ、少しでも地球環境を守る意識を持つことが大切なんです。

――私たちが自宅でできる具体的な対策はありますか?

私がまず取り組んで欲しいのはCO2の排出をおさえること。家庭が排出するCO 2の半分ほどは電気なので、「再生可能エネルギーによる発電に切り替える」だけで大きな削減につながります。何気ない日常の行動を変えることが地球を守ることにつながり、地球温暖化による気候危機を抑え、災害が起こりにくい未来を作っていくと思うんです。
また、地域でできる「もの・こと」を大切にして欲しいと思います。食べるものもそうですし、地域で再生可能エネルギー発電に取り組む電力会社を選ぶこともそう。すると、大規模災害が起きた時、地域ごとに自立分散型のライフラインがある状態を作ることにもなるんです。

――最近では「サステナブルな防災」の必要性も言われています

地球にやさしい暮らしが持続可能な未来にも防災にもつながるという視点で「サステナブル防災」という言葉を2020年に作り、発信を続けています。先ほどの電力会社の切り替えもその一つですが、たとえば、毎日できることでは、コンポストを始めること。最近ではマンションに置いておけるものもあります。コンポストがあれば、ゴミを減らすことにも繋がりますし、災害時に残飯や排泄物の処理をすることができます。他にも、太陽光発電を取り入れること。最近はポータブルのソーラーパネルもいろいろな種類が販売されていますし、ちょっと大掛かりになりますけど、自宅にソーラーパネルを設置することもおすすめです。そうすれば毎日自宅で使用する電力を賄うことができるだけでなく、ライフラインが寸断されるような状況下でも蓄電池があれば非常用電源とし活用することができます。

これまでの災害で「普段使っていないものは、災害時も使えない」という教訓があります。特別な防災グッズを購入するのではなく、毎日使えるもので、いざという時にも役立つアイテムがいろいろありますので、生活の中に取り入れてもらえたらと思います。それが、今後スタンダードになっていくだろう、環境のため、防災のための取り組みなのではないかなと考えています。

特別なことではなく、日常に繋がった備えと行動を

――日常の中に防災・環境への意識を取り入れていくことが大切なんですね

例えば、蓄電することで停電にならず、外せば懐中電灯として使用できる電球がすでにあります。

家の電球をこれに変えておけば、停電して真っ暗になることを避けられます。また、災害時にはガスも止まりますので、家族でお鍋を食べる時に使用するカセットコンロをひとつ用意して、スペアのボンベを多めに置いておくだけでもいいと思います。災害時に大切な水は、ウォーターサーバーを利用したり、自宅の水道管を太くしたりして備える方法もあります。

備蓄は1週間分が目安です。改めて大量に用意しなくても、すでにお米や乾麺であれば自宅にある方は多いのではないでしょうか?いつもの日常にほんのちょっとプラスするくらいの意識で、賞味期限が切れない範囲で使い切れるものを多めにストックしておきましょう。
ただし、トイレはちょっと工夫が必要ですね。災害用トイレは家族の数に合わせて準備しておくと安心です。また、災害時のゴミの保管場所は事前に検討しておきましょう!

――それでは最後に、カボニューの読者にメッセージをお願いします

毎日、防災や環境問題に意識を向けて暮らすことは、難しいと思います。しかし、災害のニュースを耳にしたタイミング、引っ越しや進学、就職などを良いきっかけとして、地域のハザードマップを調べてみてください。自分が普段暮らしている場所の危険性がわかります。そして、その危険性に合わせて備えておくことが大事なんです。大切なのは他人事にしないこと。命を守るためにも、地球温暖化を止められる最後の世代として、小さくてもいいので行動をしてほしいです。

*  *  * 

環境問題というと壮大すぎて、現実逃避してしまいそうになります。しかし、自分が住む地球の「未来」を作れるのは今を生きている私たち。今を生き抜くために、まずは防災意識を持っていざという時に備え、次世代により良い地球をつなぐためにできることを積み重ねていけたらなと思います。


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