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沖縄発!スタートアップ企業が描く「サステナブルな未来」とは?「ハッピーアーススタートアップピッチ」イベントレポート

エコフレンドリー(環境に優しく)で、エシカル(倫理的)で、サステナブル(持続可能)な事業を展開する企業が自社の技術やサービスを発表する「ハッピーアース スタートアップピッチ」が9月17日(土)、沖縄県の沖縄本島中部に位置する沖縄市で開催されました。
会場には環境に関心を持つ多くの方が集まり、自然と共生する文化が根強い沖縄発の技術やサービスについての発表を、熱心に聞き入っていました(ちなみに、発表する企業の中には京都から参加している企業も!)。各企業は環境問題に対して何を思い、どんなことを課題に感じ、どんな技術やサービスで解決しようとしているのでしょうか。

※冒頭の「はいさい!」は沖縄のあいさつの言葉で、女性が使う場合は「はいたい!」です。

楽しみながら、SDGsを考える

「ハッピーアースフェスタ」は2021年、「私にもできるSDGs(持続可能な開発目標)」をキーワードに、人や地球にやさしい取り組み、生活の中で実践できるSDGsを広めていこうと、沖縄県で開かれるようになりました。同フェスタ2022のプログラムの一つ「ハッピーアース スタートアップピッチ」には、沖縄県のスタートアップを中心に5つの企業が参加。それぞれの取り組みを発表しました。

会場となったのは沖縄市の老舗アーケード「一番街」の中にあるスタートアップ支援拠点「ラグーン・コザ」。普段はテレワークやコワーキングのスペースとして活用されているこの場所。この日はイベント開催に併せて、かき氷や手作りの雑貨、水風船などを販売する出店が並び、さながらお祭り会場のような賑わいでした。

「街のへそをつくりたい」 株式会社Social Design

14時半、スタートアップピッチのイベントがスタート。

審査員や来場者が見守る中、プレゼンテーションの口火を切ったのは株式会社Social Designの北野勇樹代表。沖縄県本島北部の名護市で運営しているコミュニティパーク「coconova」について説明を始めました。coconovaは、診療所だった建物をリノベーションし、誰もがふらっと立ち寄れるような、ワークショップにも参加でき、コワーキングスペースで仕事しながら横のつながりを作れたり、お腹が空いたらご飯も食べられたりする…、そんな“何でもあり”の場所。2022年1月の開所から半年強のうちに、子どもから20、30代の若者、おじいちゃん、おばあちゃんまで幅広い年齢層の人が集い、交流する場になったと言います。
地域交流の場へと定着しつつあるcoconovaに込めた思いを、北野代表はこう語りました。

「最終的に僕らが社会にどんな価値を提供できるかを考えたときに、地元産業の活性化につなげなくては、と考えました。街のへそをつくり、街の賑やかしみたいなことをやりたい。利用者の中から産業が興るようなカルチャーを醸成したいんです。“coconovaに行けば、名護に行けば、新しく仕事を作ることができる”みたいな。その輪を街から、地域、都市へと広げていって、最終的には自律分散型の都市づくりを目指したいと思います。」
 
北野代表の想いが伝わり、会場全体が温まっていくのが分かりました。

「干ばつに苦しむ農家を助けたい」 EF Polymer株式会社

2番手を務めたのはEF Polymer株式会社の下地邦拓COO(最高執行責任者)。同社のCEO(最高経営責任者)、ナラヤン・ガルジャール氏がインドの干ばつ地域出身だったことが「干ばつに苦しむ農家を助けたい」という同社のミッションの原点に。沖縄科学技術大学院大学(OIST)のアクセラレータープログラムに採択され、オレンジやバナナの皮など作物の食べられない部分を材料にした、100%生分解性を有するオーガニックポリマーの開発・製造にこぎつけたそうです。ジュース工場から出る作物の不可食部分を使ってポリマーを作り、農家がそのポリマーを使って作物を作る。そしてさらに、その作物の不可食部分を使ってポリマーを作る…、インドでこのようなサーキュラー・エコノミー(循環経済)構築を実現することができ、農家の収入20〜30%増につなげることができたと言います。

下地COOは「2050年には世界人口97億人の半数以上が慢性的な水問題に直面すると言われていて、そのことが深刻な食糧問題を引き起こすと考えています。加えて、世界中の生ゴミ廃棄の過程で排出される温室効果ガスが地球温暖化、気候変動の一因になっている。われわれのポリマーで生ゴミ問題と農家の水問題を同時に解決していきたい」と語りました。

「捨てるものがない明日へ」 株式会社フードリボン

3番手は株式会社フードリボンの宇田悦子社長。普段食べているパイナップルの茎から繊維が取れることを知ったことをきっかけに、ファッション産業の大量生産・大量廃棄の課題へと意識が向かったと言います。数年間の研究の結果、畑に持ち込んだ機械にパイナップルの葉や茎を入れるだけで繊維を抽出できるようになり、生産農家に直接、報酬を支払える仕組みを構築することができるように。繊維を抽出した後に残る葉肉もパルプとして活用し、バイオマスストローの原料とする事業も展開しているそうです。

宇田社長は「研究開発によって、①環境負荷が少ない材料だけで使い勝手がいい製品を目指す。②環境負荷の少ない素材が少しでも入った製品の流通量を増やし、スケールメリットを出してコストを下げる。③消費者に考えるきっかけをつくり、多少不便で高くてもいいから使いたい、環境にいい物を選びたいという流れをつくる。この3点を軸に事業を展開していき、捨てるものがない明日を目指したい」と力強く語りました。

「生きるためのおいしさ、生み出したい」 株式会社BugMo

4番手を務めたのは京都市に本社を置く「株式会社BugMo」の松居佑典代表取締役です。食用昆虫としてのコオロギの養殖システム開発、食品の研究・開発に取り組んでいます。

同じタンパク質をつくるのに、牛や豚と比べて、少ないエサや水の量で済むというコオロギ。コオロギを食のコミュニティーの中心に据え、脱皮殻や糞を肥料として農家に提供し、農家は肥料にかかっていた費用を削減する。農家から余った野菜をコオロギのエサとしてもらい、タンパク質を生み出していく…、というような循環を構想しています。コスト面では品種改良を行い、食品残渣や農業残渣をエサにして育てられるようにしたことで、従来からあるプロテインとも価格面で勝負できるようになったようです。さらに、大豆ミートなどにコオロギミートを混ぜることで、これまで植物性の大豆ミートでは出すことが難しかった肉の匂い、旨味を出せるようになったと説明しました。あらゆる植物性の代替肉にテイストとして取り入れてもらえる可能性があると、市場の開拓可能性を訴えました。

松井代表は、「弊社のビジョンである『生きるためのおいしさ』と沖縄の言葉の『ぬちぐすい』(おいしい食べ物や体に良い食べ物)に親和性を感じて、沖縄で何かできないかと探っています。沖縄のぬちぐすい精神をもとに、日本からおいしい文化の発信を考えたい」と意気込みを語りました。

「CO2吸収技術で循環型社会を」 株式会社リテックフロー

発表のトリを務めたのは琉球大学工学部教授でもある、株式会社リテックフローの瀬名波出社長。元々、研究していた「熱エネルギーの移動」を応用し、回収したCO2を海ブドウなど海藻の養殖に活用することで「カーボンマイナス」(排出される温室効果ガスよりも、植物などによって吸収される温室効果ガスの量が多い状態)の実現を目指しています。
CO2が入っているボンベの中にミスト状にした海水を吹きかけることで、他の方法より効率よくCO2を回収する技術を有するリテックフロー。CO2濃度の高い海水の中で海藻を育てると収量や歩留まりが上がる結果が出ているので、他社と協業しながら、コンテナ型の海藻養殖システムを構築。温度や水流、CO2濃度などが特定の条件の場合「カーボンマイナス」を実現できると試算しているようです。

瀬名波社長は、「藻類ビジネスもバイオ燃料も将来は大きな市場が見込まれています。ただ、リテックフローとしては市場を追求するだけでなく、ほとんど労力を使わなくてもいい海藻養殖システムの魅力が伝わることで、障がい者や介護などで時短でしか働けない人も産業に従事できる仕組みを考えたいと思っています。きっと世界中にニーズはあるので、技術が社会を優しくする、をテーマに事業を進めていきたい」と語りました。

どのスタートアップ企業もサステナブルで優しい社会の実現に向けて歩みを進めていると、強く感じさせる発表でした。

カボニューが共感した沖縄の“公園”コミュニティ

全てのプレゼンが終わり、講評に。

カボニューとイベントを共同出展する「カボニュー賞」を株式会社Social Designさんが受賞。北野代表は「僕らがやっていることをほかの企業が評価してくれることが、何よりうれしいです。(カボニューが)同じような“公園”をつくろうとしていると知って、驚きました!」と笑顔を見せてくれました。
 
講評の際、カボニューを代表して中村からは、「皆さんの表情を見たり、プレゼンを聞いたりすると、いろんなアイデアが湧いてくるし、こういった企業と一緒に何かやりたいという気持ちになります。カボニューでは誰もが気軽に集まれる公園みたいな場所をつくりたいと思っていて、Social Designの北野さんたちが取り組んでいる地域コモンズの姿がまさに重なりました」とコメント。

Social Designさんだけでなく、参加された企業のみなさんはどこも同じくらい真剣に環境問題に向き合っていました。その想いをカボニューはしっかりと受け取り、環境への取り組みがさかんな沖縄から発信されるカボニューな取り組みを今後も応援していきたいと思います!


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