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京都にある「現世でも極楽、来世でも極楽」を叶えるお寺。環境保全に取り組む、即成院・平野雅章住職の思いとは【前編】

寺社仏閣、華道、茶道など伝統的な文化をとおして自然環境の大切さを訴え、守る「一般社団法人 自然環境文化推進機構」が日本の古都・京都にあります。その理事の一人、東山にある即成院の平野雅章住職に、即成院とはどんなお寺なのか?自然環境に対してどのような想いで活動をされているのかを伺いました。
 
まずは、即成院の成り立ちや阿弥陀如来と二十五菩薩、そしてご祈祷についてお話しいただきます。

阿弥陀如来と二十五菩薩で表す「現世でも極楽、来世でも極楽」

――平野住職
即成院は皇室の菩提所として知られる泉涌寺の塔頭で、992年に伏見に建立された光明院が起源とされています。その後、藤原頼通の子・橘俊綱が平等院と向かい合う場所に寺院を移築。

父が建立した平等院を超えるような極楽――現世でも極楽、来世でも極楽をかなえる空間を、阿弥陀如来と二十五菩薩の像で表現しました。

阿弥陀如来像の高さは約5.5メートル、その脇に並ぶ二十五菩薩も座高が約150センチあり、本堂が造立された当初は金箔仕上げの像が並ぶことで、金色のまばゆい空間だったそう。約1000 年という長い時間を経た今では木地が姿を見せ、表情穏やかで、ありがたいお姿に。これらは、国の重要文化財に指定されています。また、菩薩様の約半分が楽器を手にしていることから、“仏さまのオーケストラ”と呼ばれるようになりました。

楽器を手に持つ菩薩様は、極楽の調べを奏でると言われています。その楽器の多くは現在の雅楽などで使われている元になっているのだとか。例えば、獅子吼(ししく)菩薩が手に持っているのは横連笛(おうれんてき)という楽器で、ヨーロッパではパンフルートと呼ばれていたものです。

獅子吼菩薩は仏さまの教えを遠くまで伝えるために、口を開いて、白い歯を見せています。向き合って笑うと「素敵な笑顔が身につく」と言われており、モデルや女優の方などから人気があります。

平安時代に始まり、現代に復活。仏さまの前で音楽を奏でる奉納演奏

――平野住職
即成院が建立された平安時代の頃は、現世でのご利益を願って、仏さまにその当時に最高のものをお供えしていました。その一つとして、演奏家を集めて音楽を奏でることもあったようで、それを現代に復活させたのが奉納演奏です。
 
即成院には国内外から多くのミュージシャン、演奏家、歌舞伎役者やミュージカル俳優の方が来られ、コンサートを行なったり、「力を得られる」と演目の一部を奏でる方もいらっしゃいます。全日本学生音楽コンクールで優勝した学生さんたちにも、奉納演奏の場を提供しています。

3年ぶりに行われる二十五菩薩お練り供養

部屋を囲むようにずらりと並んだ二十五のお面の中から「インスピレーションで一つお選びください」と声をかけてくださった平野住職。直感で選ばせていただいた、衆宝王(しゅうほうおう)菩薩のお面を持ちながら、お話しいただきました。

――平野住職
毎年、10月の第三日曜に行われるお練り供養法会では阿弥陀如来と二十五菩薩が、現世に降り立ちます。皆様はお座りになっているので動けないため、代わって菩薩様のお面をつけ、衣装を着た人たちが、“極楽から降りて来る時に乗る雲”に見立てた橋をお渡りになるという行事です。
 
このお面は江戸時代に作られたもので、無形文化遺産に指定されている貴重な和紙を重ねて象ったものに漆を塗り、その上から金箔による装飾が施されています。

お面には目、鼻、口、耳に小さな穴が空いており、身に着けた人は「菩薩様と同じ五感(※1)が得られる」と言われているようです。この五感を刺激して第六感を得られる状態を、菩薩体験と呼んでいます。
※1)五感とは人や動物が、目、耳、鼻、舌、皮膚の5つの器官を通じて外界の物事を感じる感覚のこと。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を指します。

阿弥陀如来像のすぐ傍で受けるご祈祷。そしてつながる前世・現世・来世

ご祈祷の前にお線香を一本いただき、仏さまにお供えして着座。「塗香(ずこう)」を手に塗り、お清めを行ないます。木の粉のようなものでとてもいい香りがしました。
 
即成院では祈祷を受ける人が阿弥陀如来像の傍まで進み、その背後から平野住職が仏さまに向かってお経を唱えます。平野住職によると、これは祈祷を受けるうえで「最高の状態」。お供えしたお経を仏さまよりも先に祈祷者が受けることができ、仏さまからのご利益を平野住職よりも先に取り入れることができるそうです。

ご祈祷の後には、平野住職のご厚意でお練り供養法会で使われるお面を私たちもそっと顔に重ねさせていただきましたが、漆の香りも感じられるほどに、五感が研ぎ澄まされるのが分かりました。こうした体験を通じて前世と現世、そして来世がつながっていると感じてほしいと、平野住職は話しています。
 
「人間は片親では生まれない。生まれ変わった先の来世は、現在と地続きにある」
 
こうした考えもまた、平野住職が取り組まれている自然環境の保全活動につながっているようです。次回はその理念や活動内容などについて、話を聞いてみたいと思います。


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