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【スローに歩く、北欧の旅#14】環境にも人にもいい 北欧式ベジフードを食べ歩く

みなさん、こんにちは。ライターの森百合子です。カボニューにつながる、北欧での体験を紹介するこの連載。今回は北欧各国のベジタリアン事情からヴィーガンに大人気の味まで、北欧のおいしい話をお届けします。

ベジメニューはあたりまえ

北欧の伝統料理といえば何が思い浮かぶでしょうか?
 
有名なのは、イケアでも食べられるミートボールでしょうか。日本では、デンマーク産の豚肉やアイスランド産のラム肉なども知られているので、北欧の食というと肉料理をイメージされる方は多いかもしれません。でもいまの北欧では若い世代を中心に菜食を選ぶ人が増えています。動物愛護や健康を理由に肉を避ける人ももちろんいますが、最近では「より環境に負担の少ない食事を」とベジタリアンになる人は多く、卵や乳製品も一切とらないビーガンも増えています。レストランやカフェでは、ベジタリアン&ビーガンメニューがあたりまえのように用意されているんです。

旅をしていると野菜が不足しがちなので、ベジメニューは旅行者にとってもありがたいもの。私もよく利用するのですが、印象に残っているのは根菜類を使ったプレート。北欧ではビーツやセルリアック、ルタバガといった根菜をよく食べます。つけあわせとして出るほか、スープにサラダにキャセロールにとさまざまな料理で活躍。昨今では、料理の主役になることもあるんですね。

とくにビーツは食物繊維やビタミン、カリウムを豊富に含んでいるスーパーフードとして再注目され、ヘルシー志向の店ではビーツを使ったデザートや、ビーツパウダーと植物性ミルクを使ったビーツのラテまでありました。

根菜のほかには、大麦やオーツ麦(えん麦)などの雑穀類や豆類もよく活用され、根菜、雑穀、豆類をあわせると、ヘルシーながらボリュームたっぷりのひと皿になります。ポレンタやフムス、ファラフェルといった地中海や中東の味も人気があります。

注目が高まるオーツ麦

肉の代わりとなる植物性たんぱく質、いわゆるベジミートのなかでも大ヒット商品となったのが、2015年にフィンランドで発売されたオーツミートです。

それまでの代替肉といえば大豆などの豆類から作られるのが一般的でしたが、フィンランドのゴールド・アンド・グリーン社はオーツ麦を主成分として、えんどう豆など豆類を加えた植物性たんぱく質を開発。代替肉のイメージを覆すおいしさでまたたく間に人気商品となり、フィンランドではフード・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、いまやヨーロッパ諸国やアメリカなど国外でも大人気を博しています。

ちょうど訪れていた先のフードトラックでオーツミートのバーガーを食べる機会があったのですが、これは本当においしい!アメリカで食べたベジミートは練り物のような食感でしたが、フィンランドのオーツミートは鶏肉のような食感でうまみもあり、リピートしたくなるのも納得のおいしさでした。

スウェーデンにもオーツ麦を使ったヒット商品があります。スタイリッシュなパッケージで目を引くオートリーは、オーツ麦を使った植物性ミルク。北欧は牛乳をはじめ乳製品が豊富でおいしいのですが、一方でアレルギーを持つ人が多いのも実情。こちらもやはり従来のソイミルクが苦手だった人からもおいしいと好評で、大人気に。2022年の秋から日本にも本格上陸し、スーパーマーケットや食材店などで見かける機会が増えているのではないかと思います。そのまま飲んでも料理に使ってもおいしく、菜食派から絶大な支持を受けるオートリー。ぜひ見かけたら試してみてくださいね。

衝撃のベジタリアンメニュー

ヘルシンキの人気シェフが営むモダンなレストランを訪れた時のこと。メイン料理には肉と魚のほかに、ベジタリアンメニューとして「イラクサのパンケーキとキノコ」がありました。旅の終わりで胃袋も疲れていた頃、軽く食べられそうなパンケーキを選んだところ、出てきたパンケーキの上には黒っぽくてちょっと岩のような見た目の肉厚のキノコがたっぷり。食べてみるとシャリシャリとした独特の食感がおいしくて、食べごたえもあってお腹も大満足でした。

これまでに見たことのないキノコだったので気になっていたところ翌日、訪れた市場で同じキノコを見つけてビックリ。こ、これは……

猛毒をもつシャグマアミガサタケでした~!

と書いておいてなんですが、「毒キノコだ!」といっても、日本におけるフグのような存在。素人が知らずに調理しては危険ですが、適切な処理をすればおいしくいただけるフィンランドの味なのです。しかし、思いがけず初の毒キノコ体験をしていたのには驚きました。
 
北欧では他にもカンタレリとよばれるアンズタケや、ポルチーニも森の恵みとして食卓で親しまれています。従来は肉料理の付けあわせやソース、スープなどに使われることが多かったのですが、肉厚のきのこはベジタリアンメニューでも大活躍の食材です。

日本で食べられる北欧式ベジフード

スウェーデン伝統の味が気軽に食べられるイケアでも、ベジミートが席巻中。ミートボールならぬプラントボールや、ベジソーセージのホットドッグ、ヴィーガン向けのカツカレーもあります。
 
毎年3月に開催されているFOODEX JAPANにはフィンランドやスウェーデンからもメーカーが出展し、オーツ麦関連の食品など、日本進出を目指すヘルシーな味がさまざまに紹介されています。
 
最後に私のおすすめ北欧料理店で食べられるベジメニューをご紹介します。東京・六本木にある北欧料理専門店リラ・ダーラナでは、スウェーデンをはじめとした北欧の料理を提供しています。スウェーデンの伝統料理「ビフ・ア・ラ・リンドストロム」はビーツ入りハンバーグなのですが、リラ・ダーラナでは肉の代わりにソイミートを使ったタイプも選べます(執筆時点ではランチタイムのみ提供中とのことです)。

北欧の味をベジスタイルで試したい方はぜひ、スマクリグ・モルテ(スウェーデン語でめしあがれ)!

プロフィール  森 百合子(もり ゆりこ)

北欧5カ国で取材を重ね、ライフスタイルや旅情報を中心に執筆。主な著書に『3日でまわる北欧』(トゥーヴァージンズ)、『北欧ゆるとりっぷ』(主婦の友社)、『いろはに北欧』(学研プラス/地球の歩き方)など。執筆活動に加えてNHK『世界はほしいモノにあふれてる』『趣味どきっ!』などメディア出演や、講演など幅広い活動を通じて北欧の魅力を伝えている。築88年の日本家屋に暮らし、北欧デザインを取り入れたリノベーションや暮らしのアイデアも実践中。 
HP:https://hokuobook.com
Instagram:@allgodschillun


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