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藍染サーフアーティスト・永原レキさんが地元・徳島から“渦”をつくる理由【Think Global, Act Local #1】

「Think Global, Act Local」という言葉をキーワードに、“ローカル=地域”を中心に環境問題に取り組むグローバルな人々を紹介する、この企画。

第一回目は、徳島県海陽町を拠点に、徳島が誇る伝統文化・天然の藍染を広める永原レキさん
人と人をつなぐ引力がある!と「人間磁石/レキグラヴィティ」というニックネームを持つレキさんは、自身のライフスタイルであるサーフカルチャーと藍染をつなぐプロダクトを生み出し、全国に伝える藍染サーフアーティストです。

カボニューとレキさんが出会ったきっかけ「FREEDOM淡路島」にて。
藍染を施したサーフボードと

海外を旅しながら出会った言葉。育った街・海陽町に戻った理由

――レキさん
プロサーファーだった父が大阪から海陽町に移住し、僕はこの土地で生まれ育ち10代でサーフィンを始めました。海陽町は、ダムのない希少な清流"海部川"という川が流れていて、その河口は日本でも有数のサーフポイントとして知られています。

でも、国内で有名な湘南・千葉などのサーフタウンに比べると、徳島や海陽町はまだサーフカルチャーと地元地域との繋がりが乏しかった。地元とサーフィンのより良い関係構築に必要なヒントを探しに、20代は国内外の海やビーチタウンを旅しながら、仕事を転々としていました。

徳島県最南端の海陽町は有数のサーフポイント photo : RyotaKaneko

26歳で、オーストラリアへワーキングホリデイの旅に出たのですが、現地で働き旅を続ける中で、それまでの根無し草的な暮らし方に限界を感じはじめていました。

そんな時オーストラリアのメルボルンで出会ったのが「Think Global, Act Local」という言葉。インターネットが普及し始めたころで、外に意識が行きがちでしたが、結局グローバルはローカルの集合体。「ローカルを大切にすることが、健全なグローバルを作る」、そのメッセージが当時の僕の心境にピタッとハマりました。

アトリエから見える海陽町の海 inBetweenBlues

海外を旅していても、毎年必ず帰ってくるくらい、いい波が立つ。「地に足をつけて生きる場所」ってどこだろう?と考えたとき、僕にとってのローカルは、海陽町しかなかったんです。

帰国後、運命を変える藍との出会い

海外に住んでいるときには、エシカルやオーガニックという言葉は人々の生活に浸透していました。環境問題に対する活動家やオーガニック農家の仲間もできて、いわゆる外国かぶれした状態で帰ってきました(笑)。

徳島に帰る前に、東京で足を運んだオーガニックフェスで出会ったのが、カメちゃん(亀田悦子さん) ! 大きな会場の中、一軒だけ藍色一色の小さなブースに、映画の登場人物みたいな、白髪に眼鏡で全身藍染のおばあちゃんがいたんです。

カメちゃんは、海陽町の藍染を取り扱う縫製会社トータスの専務さんで、毎年の土つくり、種を植えるところから始まって、育った藍の葉を発酵させて蒅(すくも/染料)を作り、染め終わった染料はまた土に還し…という自然や植物の力を活かした、人にも自然にも優しい持続可能な天然藍の大切さを教えてくれました。また、その日本一の産地である徳島県の阿波藍文化の魅力も同時に教わりました。

世界的に衣服の染料がかける環境負荷が問題になっている一方で、日本や徳島、海陽町が実は「めちゃめちゃ最先端やん!」と驚愕し…
それが藍への道のきっかけです。

その後、カメちゃんが働く海陽町の縫製会社に就職し、今の僕の活動につながる根幹、「環境問題・社会問題への意識、他者に対する愛を強くもち、人間のあるべき生き方を追求すること」を学びました。

藍の葉を発酵させて作る発酵染料“蒅”(すくも)

藍やサーフィンを伝えるだけじゃない。自分を育ててくれた環境を大切にする意識を広めたい

生きる上での様々な不安や社会に対する不満。僕はこれまで、そういった気持ちをサーフィンや音楽に助けられてきました。だから、ただただ藍や地元を世の中に広めたいわけではなくて、僕を育んでくれたそれら全てに共通する根源である、自然環境や故郷の保全継承に貢献したいんです。

その想いを持ち、行動できる仲間が1人でも増えるよう努めたい。僕だけじゃなく、海陽町だけじゃなく、日本や世界各地で、それぞれの地元や自然環境を大切にして生きる人が増えれば、環境問題もその他の様々な社会問題も改善されていくと信じています。

そのモデルケースとなれるように、僕は僕のローカルを大切にしながら、グローバルに意識を向けて活動しています。

漁業、林業、農業のつながりを感じられる場所

「FREEDOM淡路島」の前には、徳島の伝統的な祭り・阿波踊りに行きました。四国は過疎の問題がある地域ですが、ダムのない清流が守られている海部川と海をつなぐ河口域には美しい波が打ち寄せ、その源流域には四国最大の滝と言われる轟の滝と、そこに鎮座する水の神様を祀る神社仏閣や祭が守られている…。

海部川が繋ぐ海と山は、古来この地の林業、農業、漁業を支え、それらの繋がりが今なお、この地では守られています。

都会には人や物があふれているけど、手薄になっているようなところにこそ、本質があって。そういった風土が残されている地域の自然環境、歴史、文化、産業に、都会の人々や地元の子どもたちが気軽に触れられるような仕組みを作りたい。そう考えるようになりました。

レキさんが総代を務める轟神社の滝

日本各地に“血と水を巡らせる”ために

徳島に限らず、日本各地の地方地域に人・モノ・コト・カネが回っていない今の状況って、人間の体で言うと血や水が巡っていないようなもの。末端が壊死してしまったら困るのに、脳みそと心臓だけを守ろうして、それに気づいていない。

中央にばかり流れているエネルギーを、各部位に引っ張っていくのが、僕の役目だと思っています。さらに、それを自分起点のネットワークではなく、政治・経済・教育にも繋げていきたいです。

レキさんがつなぐ「Think Global, Act Local」のバトン

全国各地で、それぞれの想いをもって活動している仲間がたくさんいます。

今回は京都で漆文化を軸に、工藝でヒトと自然を繋ぐ活動に尽力されている、堤淺吉漆店四代目・堤卓也くんを紹介させて頂きます。

木製サーフボードは堤くんはじめ、木工ボード職人ホドリゴ松田、
組子職人岩本大輔、サーフボードシェイパー千葉公平さんとの共創作品です(レキさん)

Lexus NewTakumi Projectを通じて知り合ったcraft×surf仲間で、国宝や神社仏閣の保全に欠かせない貴重な国産漆の70%を、彼の会社が支えています。藍と同様、原料も文化も業界も縮小していく中、サーフィンやスケートボードなどのカルチャー、映画、植樹のプロジェクトなどを通して、次の世代に漆の魅力を伝える活動を続けている素晴らしい仲間です。

FREEDOM淡路島会場にて。
徳島県上板町技の館による天然藍染体験ブース

永原レキさん、ありがとうございました!「自分を支えてくれた自然環境を、次の世代につなげたい」という気持ちと、藍やサーフィンを通したアクション。カボニューが伝えたい「自分と環境に向き合う気持ち」をまた一つ、教えていただきました。

次回は、バトンを受け取った堤淺吉漆店四代目・堤卓也さんが登場します。お楽しみに!

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