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マルシェや量り売り。フランスでの生活から考える、「手間」の魅力

今回は、フランス在住であり、社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン「IDEAS FOR GOOD」編集部に所属の富山 恵梨香さんに寄稿いただきました!フランスでの生活で気づいた、サステナブルを身近にしていくためのヒントを探っていきます。

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「サステナブルは、手間」

そう感じている人も、もしかしたらいるかもしれません。エコバッグやマイボトルを持ち歩く。壊れたものを修理に出したり、いろんな情報を見比べたり──。しかし、その「手間」は本当に不要なものなのでしょうか。なくすべきものなのでしょうか。

フランスで生活をしていて感じるのは、もともとフランスに根付いている生活スタイル自体がサステナブルであるということです。では、フランスの人々はその「手間」とどう向き合っているのか。サステナブルな生活を続けるために必要な視点を探っていきます!

蚤の市やDIY文化からみる、古いものの中にある「豊かさ」

「フランスでは、古いものほど価値がある」。パリに来て、フランス人からそんな話を聞いたのは、一度や二度ではありません。

週末にはあらゆる場所で開かれる蚤の市や、街中に点在する古着のヴィンテージショップやアンティーク家具屋さん、そしてフランスの建物の価値は歴史があるもののほうが高い、といったことにも古いものに対する価値観が表れています。

蚤の市やヴィンテージショップでは、人々が世界に一つしかないユニークさや個性を求め、お店を歩きまわります。街なかを歩く人の姿を見ても、トレンドへのこだわりはあまりないようで、古着などをカジュアルに着こなしているファッションが多い印象です。

パリで行われている蚤の市の様子

そんなひとつのモノを長く使う文化が馴染むフランスでは、街のいたるところにDIYワークスペースがあります。洋服だけではなく、家具や家電を修理する道具なども借りることができるので、近所の人々がそこに壊れたものを持って行き、作業する光景も珍しくはありません。

パリの環境配慮型複合施設「La REcyclerie」の修理スペース

一つひとつ修理をすることは、最初はやり方もわからず難しいかもしれません。しかし、時間をかけた分だけモノに愛着がわき、また大切にしようと思えるのではないでしょうか。パリのDIYワークスペースでは、修理している間、その場にいる人々と会話が弾んだり、お店の人にやり方を聞きながら進めたりと楽しみながら、豊かさを感じている人が多くいます。

マルシェにて「家にある家具を修理します」の看板

フランスでは、2021年1月から洗濯機やテレビ、パソコン、タブレット、スマートフォンなどの家電に、修理のしやすさなどを10段階評価で表した「修理可能性指数(Indice de réparabilité)」を表示することが必須に。今後ますます、DIYのムーブメントが広がっていきそうです。

マルシェ・量り売りから考える、生活を丁寧にしてくれる「手間」

週末に各地で開かれるマルシェ。人々がいろいろなお店をまわりながら、新鮮な食材を必要な分だけ購入するスタイルが根付いています。

スーパーにて洗剤の量り売り

昔からそうした量り売りスタイルが浸透しているフランスには、約400の量り売りショップがあり、2018年から2019年にかけては量り売り市場の規模が41%増加しました。フランス家庭の4割が利用していることになります()。量り売りができる商品は、野菜やお米、パスタなどの食材から、シャンプーやリンスなどの液体までさまざまです。

パリにある、シャンプーやリンスの量り売りショップ「THE NAKED SHOP」

量り売りは包装がないのでごみを減らすことができ、必要な分だけ買えるため食品ロスもなくすことができるメリットがあります。

フランスのスーパーでは、包装されているものの場合、量が多すぎて使い切れないと感じることが多かったので、量り売りはとても有り難いです。実際に量り売りに挑戦してみて感じるのは、「意外と頭を使う」ということです。

「今日はどのくらい玉ねぎを使うか?」「何個買ったら使い切れるか?」そんなことを考えながら食材をカゴに入れていると、日本のスーパーでいかに自分が何も考えずにモノを買っていたかとハッとします。

買い物に時間をかけた分だけ、家での調理が楽しくなったり、達成感を味わったりと、ひとつの消費行動を自分で考えながら選択するその「手間」の中には、生活を楽しくしてくれる要素があると感じます。

「手間」とは一体何なのか?私たちが明日からできることは?

昔からフランス人の生活に馴染む文化の中には、生活を豊かにしてくれる「手間」が多く存在します。

大げさかもしれませんが、受け身ではなく、こうした一つひとつの能動的な「選択」が日常の中に増えることが、人生を豊かにしてくれるのではないでしょうか。

サステナブルな生活をしようと思うと、これまでの効率的な生活と比べたら手間と思うこともあるかもしれません。それでも、どんなに小さなことでも、自らが必要だと思うモノをその都度、選び取っていく。その「手間」を楽しみながら暮らす喜びを大切にしたいと思うのです。

日本でも、蚤の市やマルシェなどは各地で開催されていたり、量り売りのお店も少しずつ増えていたりします。まずは週末だけでも、自分の手で選ぶ「手間」にこだわる1日を過ごしてみることで、その気持ちよさを体感できるかもしれません。

【ライター】富山 恵梨香
社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン「IDEAS FOR GOOD」編集部。2021年12月から、日本とフランスの2拠点生活をしながら、欧州の最先端の情報を居住者の視点から発信。これからのサステナビリティの可能性について模索する「ハーチ欧州」のメンバーとしても活動。

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