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地域に根差したクラフトビールづくりが、生産者と消費者をつなぐ―IN THA DOOR BREWING 中村美夏さん【Think Global, Act Local #6】

「Think Global, Act Local」をキーワードに、“ローカル=地域”を拠点として環境問題に取り組む人を紹介するこの企画。
 
前回は神戸市でローカルエコノミーをテーマに、シェアオフィスやファーマーズマーケット、メディア事業を手がけているLusie 小泉寛明さんにお話を伺いました。(小泉さんの記事はこちら

今回は、同じく神戸の街で活動している中村美夏さんをご紹介。中村さんは共同代表の中戸さんと二人三脚で、地域密着型のローカルブルワリー※「IN THA DOOR BREWING」を運営しています。
ゆったりとした時間が流れる六甲アイランドにある店舗を訪ね、お話を伺いました。
 
※クラフトビールを作る小規模な醸造所のこと

ローカルブルワリーの始まり

ーー中村さん
IN THA DOOR BREWINGの前身は、中戸が個人で営む小さなバー「BAR IN THA DOOR」でした。
 
二人で出かけている時に、たまたま岡山で醸造しているクラフトビールに出会ったんです。当時「BAR IN THA DOOR」では日本のビールを置いていなかったので、「このビールを取り扱いたい」と醸造所に相談したら、「ノウハウを教えるから神戸でビールをつくったら?」と言っていただいて。それが、ブルワリーを始めたきっかけです。
そして2015年に、神戸の繁華街である三宮からも近い二宮商店街に、IN THA DOOR BREWINGをオープンしました。

現在は、六甲アイランドに移転

当時、神戸ではまだクラフトビールは浸透していなくて。海外ではすごく人気があり、東京にも少しずつ増えてきていて、クラフトビールがブームになる予感がありました。これから新たなブルワリーが増えていく中で、どのようなブルワリーだったら残るのか? 考えの先に出てきた言葉が「ローカル」だったんです。
こうして、「地域に密着したローカルブルワリー」を目指すことが決まりました。

IN THA DOOR BREWINGの特徴

ーー中村さん
地元でしかつくれないビールとは何かを考えたときに、神戸の水を使おうと思って。「神戸ウォーター六甲布引の水」を扱う神戸クアハウスさんに提供をお願いして、天然水の神戸ウォーターを100%使用することに。
 
神戸には酒蔵が多いのですが、この水を使用してビールを醸造するところは他になくて。初めはホップの香りを引き出すのに苦労しましたが、試行錯誤を重ね、現在のビールのレシピにたどり着きました。
 
今では、Funk AleやSession IPAなど定番スタイルの5種類の他、地元で収穫される旬の果物やハーブを使った季節限定ビールもつくっています。レストランでは12種類のビールをタップから注いで味わっていただけます。

神戸産のホップといちごをつかったビール「フレッシュホップ&いちご」

ーー中村さん
ビールをつくりはじめた頃は、神戸にそんなに農家さんがいることを知らなくて、地元のフルーツを使うことはそこまで考えていませんでした。ですが、小泉さんが開催されている「EAT LOCAL KOBE FARMERS MARKET」に出店するようになって、地元の農家さんと知り合えたことで、どんどん地元の食材を使うように。買ってきた野菜を使って、ビールに合う食事も提供しているんですよ。

実際に畑を訪ねてみてびっくりしたのが、神戸でもたくさんの種類の野菜や果物が育てられていること、そして農村と都市との距離が近いこと。
私たちのような小規模のブルワリーにとって、これは大きなメリットです。一度に多くの種類の材料が近場で手に入るので、輸送コストや輸送で排出されるCO2も抑えられます。
 
毎年、季節のビールができたら生産者の方を招いて、ビールを飲みながら畑のお話を聞いたりするイベントを開催。ビールづくりを通して、生産者の方の想いを消費者のみなさんに伝えていきたいと思っています。

環境に良いことは、できる範囲で楽しく続ける

ーー中村さん
2021年に繁華街から現在の店舗がある六甲アイランドに移転。ここでは20年くらい前から、地域住人がボランティアで街並みの花壇を整えたり、畑で農作業をしたりしています。畑の肥料としてモルトかすをお渡しして、土づくりに使ってもらったりもしているんです。これは近くにローカルなブルワリーがあるからできること。

環境に良い活動をはじめた頃は、その取り組みを知ってもらうために頑張って発信していましたが、今はあまり無理せず、できることをできる範囲でやればいいかなと思っています。普段の生活の一部として活動した方が、自分自身も続けやすいだろうなと。

こういった活動を通して、「自分の手の届く範囲で、できることをやってみるのって楽しい!」って、みんなが思えるようになったらいいなと思います。楽しかったら無理なく続けられますからね。

六甲アイランド本店

ローカルブルワリーを運営していて、食や農業全体について思うことは、「地産地消」っていう言葉がなくなるくらい、一般的なものになればいいなと思っています。

売り先が見つからない小さな農家さんも、地元で新鮮な野菜を取り扱うレストランがあれば問題が解決します。わざわざ遠くに運ぶのではなくて地元で消費できたら、みんなハッピーですよね。

農家さんは直接消費者と触れ合える機会が少ないので、私たちのように間に入って加工する役割というのは大事だと思っています。ビールが生産者のことを知れるきっかけになって、消費者と生産者の良い橋渡しになれると思うんです。

知ってみて興味を持つことから始められる、地球にいいアクション

ーー中村さん
地球にいいことをしようと思っても、実際に行動に移すのってハードルが高いですよね。なので、本を読んだり話を聞いたりして、まず「知ること」から始めてみてほしいと思います。

最初は、自分の好きなものから興味を広げるのが良いかもしれません。例えばビールが好きなのであれば、私たちがつくっているようなビールの製法があるというのを、まず知ることが一歩だと思います。ビールのつくり方ってほとんどの人は知らないですし、ホップのことを知らない人も多いはず。みなさんに知ってもらうために、ホップ農家さんに来てもらって、お店の中にホップを吊るしてホップまつりをやってみたりしましたね。
 
楽しいことをやって、身近に感じてもらって、これだったら自分にもできるかも!って思ってもらえたら嬉しいです。

***
 
中村さん、ありがとうございました!中村さんのお話を通して、食を通じた生産者、加工者、消費者のローカルのコミュニティがつくられていることを知りました。この記事を通して、地球にいいことを気軽に楽しく始める人が増えるといいですね。

IN THA DOOR BREWING
中村美夏さん


1978年神戸生まれ。
1997年に留学でNYへ。2002年に帰国後、貿易会社、外資系メーカー勤務を経てインザドア合同会社を立ち上げる。好きなお酒はテキーラ。ビールはインザドアのしか飲みません。

IN THA DOOR BREWING   https://inthadoorbrewing.com/


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