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自然は、ヒトの心のよりどころ。豊かな自然を未来の子どもたちに

近頃人気を集めている、森林浴やキャンプといったアウトドアレジャー。日々の喧騒に少し疲れたとき、「自然の中でリフレッシュしたい!」と考える人は多いのではないでしょうか。では、その豊かな自然は、どのようにして保たれているのでしょう?
 
未来の子どもたちの笑顔のために自然を守り、人と自然のつながりの大切さを広めている日本自然保護協会。その広報を務める後藤ななさんに、団体の成り立ちや寄付によってどのような活動ができているのか、そして今後の課題などを伺いました。


生物多様性とはなにか?

日本自然保護協会 自然のちから推進部 広報チームリーダー 後藤ななさん

ーーー後藤さん
生物多様性とは、世界中にいる多種多様な生きものたちとそのつながりのことです。地球上には推定800万種*1 もの生きものがいるといわれており、お互いに関わり合いながら生きています。そして、生物多様性から、食べものや衣類、薬などさまざまな恵みを受けて、私たちの暮らしは支えられています。しかし、私たち人間の行動により多くの種が絶滅の危機に瀕していて、世界的な問題に…。

日本自然保護協会が事務局を担う里山の調査*2 では、里山の生きものがこの10年で急激に減少していることが示唆されました。さらにアンケート調査の結果から、それらは里山の荒廃が影響している可能性が見えてきました。
 
*1:Mora, C. et al. (2011) How Many Species Are There on Earth and in the Ocean?” PLoS Biology 9, no. 8

*2:モニタリングサイト1000里地調査2005-2017年度とりまとめ報告書


自然保護と、「社会課題」「ライフスタイルの変化」とのつながり

<社会課題との関係性>
ーーー後藤さん
今や深刻な社会課題でもある「過疎化」や「少子高齢化によるコミュニティの衰退」。その影響から、里山は手入れ不足となり、自然環境のバランスが崩れ、さまざまな問題が起こるようになりました。
例えば、近年では、イノシシやニホンジカが増えすぎることによる獣害が全国で問題に。森にいるニホンジカは増えすぎたせいで手当たり次第に植物を食べ尽くしてしまいます。その結果、森の保水性は保てず、土砂崩れが起こりやすくなるなどの問題が生じています。

「モニタリングサイト1000里地調査2005-2017年度とりまとめ報告書」から
調査地の環境変化に関するアンケート調査結果より(2018年度末時点)


<ライフスタイルの変化との関係性>
2つ例を挙げてみましょう。
ひとつは、「放置竹林」の問題です。古来、竹は建材や日用品をつくる材料として人々の生活に欠かせない素材でした。しかし、プラスチック製品や海外からの低価格商品が増えてくると、竹は徐々に使われなくなりました。竹林を整備する必要性は低下、さらに人手不足も重なることで、放置竹林となっていったのです。放置竹林の影響により、土砂崩れや獣害などの被害も増えてきたといわれます。
 
ふたつめは、「草原の絶滅危惧種」の問題です。かつて日本において、草原は、農作業を担う馬や牛を養ったり、茅葺の材料をとるためなど、各地に広大に広がっていました。しかし、時代を経て、草原で飼料や材料をとる必要はなくなり、草原だった場所は宅地や駐車場に変わっていきました。そうして草原に住んでいた生き物の多くは絶滅危惧種となっていったんです。

▶︎草地の減少と絶滅危惧種のかかわり

▶︎草原の絶滅危惧種チョウの保全活動

ライフスタイルの変化により、人と自然のつながりは希薄になっていきました。つながりが消えることで、自然をどう活かせばいいのかわからなくなり、また獣害や放置竹林といった自然の変化に気づける力も衰えてしまいます。これらさまざまな要因が合わさり、生物多様性の劣化をさらに引き起こしてしまうのではないかと危惧します。


活動における3つの柱と寄付の重要性

ーーー後藤さん
私たちは、今年で設立72年目のNGO(Non-Governmental Organization:非政府組織)です。戦後の開発により尾瀬の自然が失われそうになった時、当時の生態学者や登山家、文化人たちで結成した「尾瀬保存期成同盟」が、1951年に改組して現在の「日本自然保護協会」となりました。

活動の3つの柱
(1)全国規模の自然保護の問題の解決と支援
(2)自然保護を通じた社会課題の解決
(3)ふれあいの場と機会、導き手を増やす

自然を守るために、ただ声高に「自然は守るべきもの」と叫んでも、「便利になるのに、なぜ開発してはいけないの?」と対立を生むだけです。自然の価値を知ってもらい、自然保護を通じて過疎化等の地域課題も解決できれば、もっと社会は良くなっていくのではないでしょうか。
 
また、自然にふれあい、その大切さを実感してもらうことも重要です。そのために、自然観察指導員という地域のボランティアリーダーの養成を40年以上行い、「自然観察から始まる自然保護」をキャッチコピーに、地域の皆さんと「自然とのふれあいの場づくり」を推進しています。

<活動と寄付の関係性>
私たちの活動を支える収入のうち55%は寄付で成り立っています。日本各地での森林の調査や絶滅危惧種の生態調査、自然観察指導員の講習会など、全国での幅広い活動ができるのは皆さんからの寄付のおかげです。

▶︎活動報告:2022年のアニュアルレポート

寄付の方法は大きく2つ。ひとつは会員になっていただく方法です。年会費5,000円から入会でき、継続的に私たちの活動を支えていただいています。
 
もうひとつはプロジェクトごとの寄付です。例えば、四国のツキノワグマを守る活動、草原のチョウを守る活動、海を守る活動など、プロジェクトごとに1円から寄付できる仕組みです。自分が興味のある活動に対して支援していただければと思います。


お買いものは「選択」であり、みんなができるアクションのひとつ

ーーー後藤さん
私たちのような自然保護団体への寄付は、環境へのアクションの一つだと思いますが、自ら行動したいという方には、例えばゴミ拾いも気軽にできることとしておすすめです。また、近くの公園といった身近な自然に目を向けて、お気に入りの場所を見つけたり、そこに生息する虫や鳥たちの変化を感じることもとても大切なことだと思います。
 
そして、誰もが日々行うお買いものも、大事なアクションではないでしょうか。お買いものは自分たちの未来を「選択」することだと思います。自然を守ることにつながる商品に関心を持ち、購入し、身の回りに取り入れてみる。一人ひとりが与える影響は大きくないかもしれませんが、数が集まれば社会を変える力になるはずです。
 
「お買いいもの~It’s Shopping for Good.~」もその一つだと思います。昨年、環境へのアクションとして素敵な企画だと思い、寄付先にあたる社会貢献団体の一つとして参加することに。この企画に共感してお買いものをされた方が想像以上に多く、結果的にたくさんの寄付をいただきました。私たちが掲げた「自然とともにある社会」に、こんなにも多くの方から想いを託していただいたのだなと思うと、胸がいっぱいです。今年も引き続き寄付先として参加しておりますので、私たちの活動内容を見て、自然保護活動を応援してみたいなと感じていただけましたら、寄付先として選択していただけると嬉しいです。皆さまの想いを今後の活動につなげていきたいと思っています。
 
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後藤さん、素敵なお話をありがとうございました。

「自然保護」と言っても自然が壊れないように見守るだけでなく、さまざまな活動があることが分かりました。現地に足を運んで自然保護のお手伝いをすることもできますが、寄付というアクションで活動をサポートする方法もあります!「お買いいもの~It’s Shopping for Good.~」に参加して、お買いものを楽しんだ先に寄付ができれば、それもステキなアクションですよね。


日本自然保護協会

日本自然保護協会は、急速に進んでいる生物多様性の損失を回復基調に導き、日本のネイチャーポジティブ※実現を目指して活動中。この実現にはパートナーシップを構築し、市区町村からネイチャーポジティブを実践していくことが不可欠です。2023年5月にNTTドコモと所沢市、日本自然保護協会は3者で協定を締結。3者が協働し、生物多様性保全へのICT技術の活用可能性を探りながら、所沢市のネイチャーポジティブに貢献していきます。

※人と地球のために、生物多様性の損失に歯止めをかけ、自然を回復させること。


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