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【スローに歩く、北欧の旅#28】次の旅のおすすめは?サステナブルな北欧旅のススメ②

みなさん、こんにちは。北欧を旅するライターの森百合子です。カボニューにつながる、北欧での体験を紹介するこの連載。前回はフィンランドの自然を体験するサステナブルな旅をご紹介しましたが、今回は私が北欧で初めて「サステナブル」を意識した、町中でのホテルステイについてご紹介したいと思います。


北欧を旅する理由

私が初めて北欧を旅したのは2005年のこと。以来、年に1~2度(時には3度)のペースで北欧5カ国を繰り返し訪れています。初めて北欧を旅した時の主な目的は建築やデザインを見て回ることでした。当時はデザインや福祉など社会システムの視察ツアー、またはオーロラやフィヨルドなど自然を目的とした旅やツアー企画が主流だったように思います。

それが、2006年に公開となったフィンランドを舞台にした映画『かもめ食堂』の大ヒットや、幸せの国ランキングで上位を占める国々として注目が高まったことで、昨今は暮らしをのぞくような旅のニーズが増えています。私も旅をするうちに、まさにそうした日常の暮らしや町歩きに魅了され、こうして繰り返し訪れて、ついにはガイドブックまで書くようになりました。だから北欧を旅してみたいという方にはまず町歩きをおすすめしています。

グリーンなホテルを選ぶ

エコロジカル、サステナブルな旅というと自然の中へ出かけるイメージがありますが、宿泊施設や移動手段を選べば、町滞在でもサステナブルな選択ができます。私が最初にサステナブルなホテルについて知ったのは2006年にコペンハーゲンを旅した時でした。

以前の記事で、北欧では消費者がオーガニック製品や環境負荷の少ない製品を選びやすいように食品や生活用品のラベリングが進んでいるとご紹介しましたが、こうしたエコ認証は宿泊施設に対してもあるんです。グリーンキーと呼ばれる国際的な認証団体はデンマーク発祥。1994年にデンマークの環境大臣の旗振りのもと設立され、現在もデンマークに本部を置き、世界最大規模の国際NGO機関FEE(環境教育基金)が運営しています。2022年時点で、60の国から3700の施設が認証を受けています。

グリーンキーの認証には13の基準があり、水と電気の節約、クリーンエネルギーの使用、ゴミの削減や分別といった環境面の項目から、スタッフの意識教育や顧客への周知、持続可能な運営といった項目までが細かくあげられています。

グリーンキーのサイトを見ると世界地図から各地の加盟ホテルを調べることができます。発祥地であるデンマークはやはり数が多く、スウェーデンやフィンランド、またドイツにはかなり多くの認証ホテルがあることがわかります。日本でも長野の扉温泉や明神館などグリーンキーを取得した施設があります。またグリーンキーの対象にはホテルや宿泊施設だけでなく、キャンプ場や美術館、テーマパークなども含まれています。

グリーンキーを体験

2006年に、2度めの北欧旅行で滞在したのが、デンマークの首都コペンハーゲンにあるグリーンキー認証ホテル。旅の準備をしていた時に読んだ本でグリーンキーのことを知って、せっかく環境先進国を旅するならと予約してみたのです。滞在したのは、観光の中心地ニューハウンにある、ホテル・ネプチューン。ニューハウンとは「新しい港」を意味し、港に面してカラフルな建物が並んだ景色は観光ガイドでもおなじみ。かつては船乗りたちの溜まり場として栄え、童話作家のアンデルセンが暮らしていたことでも知られる場所です。

ニューハウンの港から一本北側の道に建つホテル・ネプチューンは、もともと船員の宿泊施設だった建物をリノベーションしたホテル。だからなのか、ひとつひとつの部屋はかなり小ぶりで、ベッドもコンパクトサイズ。荷物を広げるのに難儀しましたが、歴史を感じさせるクラシカルな建物に品のいい調度品があしらわれた館内は雰囲気がよく、朝食をとる部屋が吹き抜けになっているのが印象的な、居心地のいいホテルでした。

そしてここのホテルのオーナーは、グリーンキーに設立時から関わっている中心人物でもありました。もともと教育に携わっていたことからグリーンキーの構想に共感し、ホテル業界の意識改革を促すためにひと肌脱いだのだそう。

毎日タオルの交換をしない、シャンプーなどのアメニティ類は必要なだけに制限し、それも環境負荷の少ないものを選ぶ、朝食にはオーガニック食材を使用、使い捨てのカップなどを使わない……といった今でこそ当たり前に目にするサービスのあり方は、2006年当時にはとても斬新に思えましたね。でも滞在にあたって不便はなく、むしろ毎日タオルを洗うなど今までが過剰だったのだと気づくきっかけとなりました。

現在はオーナーが変わり、大規模なリノベーションをしてホテルの名前も「SKT. Annæ」と 新しく変わりましたが、グリーンキー認証はそのまま。気持ちのいい吹き抜けのある空間もそのまま残されているようです。オーナーが変わってもグリーンキーの概念が受け継がれたのは嬉しいですね。

ちなみにコペンハーゲンの町はバスや地下鉄、近郊列車など公共交通機関が充実していて利用しやすいので、移動手段もサステナブルな選択がしやすいんです。また世界有数の自転車都市なので、サイクリングを楽しみつつ観光するのもいいですよ!次回はコペンハーゲンの町中で泳いだ体験をご紹介します。

これはコペンハーゲンで見つけたアンデルセンの絵本。日本語では『火うち箱』の題名で紹介されている、初期の作品です。願いを叶えてくれる魔法の火打ち箱を手に入れた兵隊の物語で、巨大な目をした火うち箱の番犬や、魔女の傍らには黒猫も登場します。ちなみにアンデルセンはデンマーク語では「アナスン」のように発音します(アンデルセン、では通じないのです)。よくある名字なので絵本作家のアンデルセンを指す時は、名前のイニシャルをとって、「H.C(ホー・セー)」と呼ぶのが一般的なんです。それではヴィシース(デンマーク語でまたね)!

プロフィール  森 百合子(もり ゆりこ)

北欧5カ国で取材を重ね、ライフスタイルや旅情報を中心に執筆。主な著書に『3日でまわる北欧』(トゥーヴァージンズ)、『北欧ゆるとりっぷ』(主婦の友社)、『いろはに北欧』(学研プラス/地球の歩き方)など。執筆活動に加えてNHK『世界はほしいモノにあふれてる』『趣味どきっ!』などメディア出演や、講演など幅広い活動を通じて北欧の魅力を伝えている。築88年の日本家屋に暮らし、北欧デザインを取り入れたリノベーションや暮らしのアイデアも実践中。 
HP:https://hokuobook.com
Instagram:@allgodschillun

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