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【スローに歩く、北欧の旅#15】気候のために、スーパーマーケットができること

みなさん、こんにちは。ライターの森百合子です。カボニューにつながる、北欧での体験を紹介するこの連載。今回は北欧のスーパーマーケットで見かける認証マークや、店ごとの試みについてお届けします。

よりよい選択のためのラベリング

北欧のスーパーマーケットで商品を手に取ると、さまざまな認証マークが目につきます。よく目にするのは国産マークやオーガニック認証のマーク。国産マークは国旗をモチーフにしたものが多く、たとえばフィンランドでは国旗と国鳥を組み合わせたスワンマークが知られています。フィンランド産の原料を使い、国内で作られた製品に付けられる認証マークです。

赤いラインに王冠マークはデンマーク政府によるオーガニック認証マーク。デンマークのオーガニック基準は世界でもっとも厳しい基準のひとつと言われます。グリーンのDebioマークはノルウェーの食品安全局の基準に則ってオーガニックかつサスティナブルと認定された製品につけられています。ちなみにデンマーク語でもノルウェー語でも、オーガニックはØkologiskと綴り、Oに斜め線のØマークはオーガニックの目印でもあります。

国産マークとオーガニック認証がついたトマトはパッケージにもデンマーク国旗がいっぱい。ちなみに北欧の人々はみな自国の国旗が大好きです。

ノルウェーのスーパーマーケットで見たファラフェルには、ノルウェー、スウェーデン、EUのエコラベルが並んでいて、商品名にはノルウェー語、スウェーデン語、フィンランド語で「オーガニック」との表記があります。フィンランド語でオーガニックはLuomuと書きます。下の紅茶はフィンランド農林省の基準による認証マークがついていて、そこにもLuomuとあります。

グリーン地に白鳥のマークはスワンラベル、もしくはノルディックエコラベルとよばれるもの。これは北欧理事会による認証マークで、北欧諸国で生産される製品のうち、原材料から生産工程、リサイクルまで商品のライフサイクルにおいて環境への負担が少ない製品に対して貼られています。北欧理事会とは北欧5カ国(アイスランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド)とその自治地域(フェロー諸島、グリーンランド、オーランド)が協力し合う国際組織で、文学や芸術に対する独自の賞を設けるほか、各国の環境対策も評価しています。

こうしたわかりやすいラベリングにより、オーガニック製品や環境によりよい製品を選択しやすくなり、実際にこうした認証マークの導入により製品を手に取る人が増えている統計もあります。そして昨今、注目されているのが気候ラベル。気候への負担が少ない製品に貼られるラベルです。
 
世界に先駆けて、食品への気候ラベリングを取り入れたのがスウェーデンです。スウェーデンで広く知られるオーガニック認証機関KRAVと、エコロジカルな製品かつ労働環境に対する認証を行うスウェーデンシールが、従来のマークにKlimat(スウェーデン語で「気候」の意味)認証をプラスしたラベルを作成しています。私はまだこのマークの実物を見たことはないのですが、次回の旅では探してみようと思います。
 
デンマークでは2022年の春に、気候変動政策の一環としてすべての食品に気候ラベリングを実施することを決定しました。認定基準の設定が複雑なために具体的な導入時期はまだ不明ですが、900万デンマーククローネ(約1億6,400万円)の予算を割り当てると発表。実施されれば、国の政策として気候ラベルを導入する世界初の国となります。

フードロスへの取り組みも積極的

実店舗を持たないオンライン展開で注目を集めているのがノルウェー発のスーパーマーケットoda。オンライン型は消費者にとって便利なサービスであるのはもちろんのこと、店舗を持たないことによりCO2削減につながり、また店舗ごとの食品廃棄も減らすこともできます。配送面でもルートを効率化し、電気自動車を導入するなど、個々人が買い出しに行くよりも環境負担を減らせるとして、便利かつ気候のためになるとして人気が高まっているのです。odaでは毎年サスティナビリティレポートも作っており、プラントベース商品の売上状況や配送におけるエネルギー削減率、また従業員のQOLや女性役員の割合まで細かく報告しています。
 
odaのアプリでは、商品を買うごとにカーボンフットプリントが表示され、消費者は自分が購入した商品による環境負荷を確認できます。また購入商品に合わせたレシピ提案もあり、各レシピには「時短レシピ」「ヴィーガンレシピ」といったマークの他に、「気候にやさしいレシピ」マークも提示されるようになっています。
 
デンマークのNGO機関DCAがはじめたスーパーマーケットwefoodでは、賞味期限切れの食品や、パッケージが破損している製品、またクリスマスやイースターなど季節限定商品の売れ残りを安く販売し、フードロス削減に貢献しています。売上は貧困国への支援に使われる他、気候変動に対する活動への支援にもまわされています。
 
そしてスウェーデンでは大手食品メーカーのFELIX社が「気候マーケット」と呼ばれるスーパーマーケットをストックホルムにオープンしました。FELIXといえばスーパーマーケットで必ず見かける顔。ミートボールから調味料までさまざまな製品を揃えるメーカーですが、気候マーケットでの製品価格はカーボンフットプリントに基づいて決められています。つまり環境負担の大きい肉や、遠方から配送される製品は価格が高くなるわけです。さらに面白いのは、この店ではCO2eという独自の通貨単位が使用され、一人あたり1週間に約19kg CO2eまでしか買物ができません。これはパリ協定による2030年のCO2削減目標を実現するために割り出された数字で、買物の上限があることで、肉よりも植物由来の製品を選ぶなど、自分の消費動向が気候にどれだけ影響を与えているかを消費者がより意識できるようにしています。

北欧のスーパーマーケットは手頃なおみやげを見つけるのにもおすすめです。いつも買って帰る製品にもエコマークが付いていました。フィンランドのスワンマークが付いているのは、チューブ入りのハチミツです。おいしくて、チューブタイプは使いやすいのもいいところ。

スウェーデンやフィンランドで買えるハンドソープもおみやげの定番です。北欧理事会によるノルディックエコラベルが付いています。コロンとした形が可愛くて友人へのおみやげにも好評です。
 
可愛くて、手頃で、環境にもいいおみやげが見つかる北欧のスーパーマーケット。旅する時にはぜひチェックしてみてくださいね!

フィンランドのスーパーマーケットで出会った猫さん。北欧のパッケージは可愛い物が多いのですが、ペット用品はちょっと野暮ったいデザインが多いんですよね。それでは、モイモイ!(フィンランド語でまたね!)

プロフィール  森 百合子(もり ゆりこ)

北欧5カ国で取材を重ね、ライフスタイルや旅情報を中心に執筆。主な著書に『3日でまわる北欧』(トゥーヴァージンズ)、『北欧ゆるとりっぷ』(主婦の友社)、『いろはに北欧』(学研プラス/地球の歩き方)など。執筆活動に加えてNHK『世界はほしいモノにあふれてる』『趣味どきっ!』などメディア出演や、講演など幅広い活動を通じて北欧の魅力を伝えている。築88年の日本家屋に暮らし、北欧デザインを取り入れたリノベーションや暮らしのアイデアも実践中。 
HP:https://hokuobook.com
Instagram:@allgodschillun


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