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【スローに歩く、北欧の旅#29】運河で泳ぐ!コペンハーゲンっ子の夏

みなさん、こんにちは。北欧を旅するライターの森百合子です。カボニューにつながる、北欧での体験を紹介するこの連載。今回はデンマークの首都、コペンハーゲンの運河で泳いだ体験をお話します。


運河に登場したおしゃれな遊泳施設

北欧というと寒い国で、ウィンタースポーツのイメージが強いですよね。でも夏には気温が上がり(場所にもよりますが、30度を超えることも)、泳いだりマリンスポーツを楽しむ人も多いんです。私は旅先で泳ぐのが好きで、北欧でも機会を見つけてはよく泳いでいます。スウェーデンの群島、フィンランドの湖水地方など大自然のなかで泳ぐのも最高ですが、都市の真ん中、それも運河で泳げる!とはじつにユニークな体験でした。

デンマークの首都コペンハーゲンは隣国スウェーデンに面するシェラン島の東に位置する港町。ニシン漁で栄えた町として知られ、デンマーク語ではKøbenhavnと綴り、「商人たちの港」を意味します。ちなみにコペンハーゲンにはNyhavn(ニューハウン=新しい港の意味)、Nordhavn(ノードハヴン=北の港)など港にちなんだ地名があり、色とりどりの建物が並ぶニューハウンはコペンハーゲン随一の観光スポットでもあります。

コペンハーゲンの心臓ともいえる運河沿いには、ブラックダイヤモンドの名前で知られる王立図書館をはじめ、オペラハウスなどモダン名建築が建ち、デザインや建築好きにとってもたまりません。コペンハーゲンの空港から町中へと向かう電車や車の中から運河が見えると「ああ、コペンハーゲンにやってきた!」という気持ちがぐっと盛り上がります。

泳げる町を目指して水質改善

夏に訪れた際には、その運河が泳ぐ人々でにぎわっているのが見えてびっくり。もともと運河沿いには工場が多く、工業化が進んだ1960年代以降、工場排水や下水により水質汚染はひどくなる一方で1990年代まではとても泳げる状態ではなかったそう。それが一転、コペンハーゲン市が水質改善に本腰を入れ、排水処理施設や下水システムを改善し、10年の時をかけて泳げるまでになりました。1950年代半ばに遊泳施設が閉鎖されて以来、じつに半世紀ぶりに人々が泳いだりくつろげる憩いの場所に生まれ変わったのです。

イスランズブリッゲと呼ばれる地域に運河プールがオープンしたのは2002年~2003年にかけてのこと。国旗の色であり、デンマーク人が大好きな赤と白のストライプのタワーが目立つ遊泳施設を手掛けたのは、今をときめくデンマークの建築家ビャルケ・インゲルスとベルギーの建築家ジュリアン・デ・スメットによる共同プロジェクト。

船のファンネル(煙突)をイメージしたという赤と白のタワーは監視員台です。船首を思わせる飛び込み台は一番高いところで5メートルほどあるそうで、近づいて見るとドキドキする高さ。軽々と何度も飛び込んでいる子どももいれば、足元を見てしばらく固まったまま、意を決して飛び込む人も。飛び込み用プールの裏側には遊泳エリアがあり、こちらでは黙々と何往復も泳ぐ本気のスイマーもたくさん。私も泳いでみましたが、足がつかないので泳ぎきれないと大変!水はもちろん海水です。

5つのセクションに分割されたプールのうち2つは子ども用の浅いプールで、6月~8月の日中は監視員がいるので家族連れも安心して楽しめる様子。ウッドデッキで日光浴やおしゃべりを楽しむ人も多く、にぎわっています。遊泳区域以外に入るのは厳しく禁じられており、泳ぎながらプールの向こうに水上バスや遊覧ボートが走っているのも見えます。ちなみに運河を行き来する水上バスはディーゼルから電気式に切り替えられています。

水との近さが人々の意識を変える

運河プールがオープンしたことで、コペンハーゲン市民の間では水質や環境への意識も高まったといいます。確かに実際に自分で泳ぐ場所となれば、この水質を守りたいと思うもの。ちなみに遊泳に問題がないか、水質は毎日チェックされているとのことです。

イスランズブリッゲにつづいて運河沿いには遊泳施設が数カ所作られ、いまや夏の運河のにぎわいはコペンハーゲン名物に。大きなショッピングモールの近くや、観光の中心地ニューハウンの近くにもプールがあり、青空の下、運河沿いの建物や景色を水の中から眺めるのも最高です。

さて実際に泳ぐ際の注意点です。着替える場所はとくにないので、泳いだあとはタオルなどを巻いてささっとその場で着替えます。まわりの人を見ていると、水着の上にそのままシャツや前開きのワンピースなどを羽織って、サンダルを履いて徒歩や自転車で帰っていく人もたくさん。湿度が低くからりとした空気なので乾くのも早く、それでいいんですね。ただし湿度がないせいか日が沈むと気温がぐっと下がる日もあるので、体を冷やさないようにしたいもの。

私は運河プール近くにあるショッピングモールでビーチサンダルを購入して、そのまま運河スイミングデビューを果たしました。仕事帰りに気軽に運河で泳ぐコペンハーゲナー(コペンハーゲンっ子のこと)に混じっての運河でひと泳ぎは、とっても気持ちよかった!これは癖になりそうです。

ちなみに施設によっては冬場はサウナとともに寒中水泳が楽しめるそう。ただしサウナや施設使用は会員制で、地元の人しか入れないとのこと。人気がとても高く、会員になるには数年順番待ちをするのが当たり前なのだとか。サウナの後に運河で寒中水泳なんて、これまた気持ちよさそうで羨ましい限りです!

初夏のある日、コペンハーゲンで遭遇したねこさん。暑さにめげずに、せっせとお散歩中でした。それではゴ ソマフェリエ(デンマーク語で、よい夏休みを)!

プロフィール  森 百合子(もり ゆりこ)

北欧5カ国で取材を重ね、ライフスタイルや旅情報を中心に執筆。主な著書に『3日でまわる北欧』(トゥーヴァージンズ)、『北欧ゆるとりっぷ』(主婦の友社)、『いろはに北欧』(学研プラス/地球の歩き方)など。執筆活動に加えてNHK『世界はほしいモノにあふれてる』『趣味どきっ!』などメディア出演や、講演など幅広い活動を通じて北欧の魅力を伝えている。築88年の日本家屋に暮らし、北欧デザインを取り入れたリノベーションや暮らしのアイデアも実践中。 
HP:https://hokuobook.com
Instagram:@allgodschillun

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