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【スローに歩く、北欧の旅#27】次の旅のおすすめは?サステナブルな北欧旅のススメ①

みなさん、こんにちは。北欧を旅するライターの森百合子です。カボニューにつながる、北欧での体験を紹介するこの連載。今回はフィンランドの森と湖で過ごした忘れられない旅についてご紹介します。


旅のあり方もサステナブルへ

今年こそは、そろそろ海外旅行をしたいと考えている方は多いのではないでしょうか。コロナ禍をきっかけに旅のあり方にも変化が出てきていますが、北欧では近年、サステナブルツーリズムの考え方がますます広がっています。

JTB総研の定義によるとサステナブルツーリズムとは、「観光地の本来の姿を持続的に保つことができるように、観光地の開発やサービスのあり方を見定め旅行の設定を行う」こと。環境汚染や自然破壊につながる従来のマスツーリズムに対抗して出てきた概念です。観光地の暮らしや文化を尊重し、自然にフォーカスするエコツーリズムの流れにくわえて、ホテルや機内での過剰なサービスを見直してゴミや無駄を減らす、移動手段を選ぶことでCO2排出を抑える、また滞在地の雇用や経済発展といったことまでを視野に入れた「持続可能な旅」を作るためのさまざまな取り組みが、いま増えているのです。

森と湖の国を体感する旅

もともとは北欧で建築やデザインを見たくて旅をしてきた私ですが、北欧へ行き始めて10年目の夏に訪れた、フィンランド湖水地方での滞在は忘れられない旅となりました。

「森と湖の国」とよばれるフィンランドには、小さなものまで含めるとなんと18万以上もの湖があります。フィンランド東部にある湖水地方は、湖に囲まれるようにして町が存在するエリアで、フィンランドの人にとって心のふるさとのような地域ともいわれます。私が訪れたのは湖水地方の町、サヴォンリンナに近い宿泊施設です。

ロマモッキラと呼ばれる宿泊施設を経営するのはカッレ・ビョルンさん一家。敷地内にはビョルンさん家族が暮らし、家畜もいて、母屋を中心にゲストの宿泊棟が点在しています。ゲストが食事をとる母屋の建物は、大きな窓から太陽の光がさしこみ、昔ながらの家具や敷物で彩られていて、サマーハウスに遊びに来たような感じ。

敷地のすぐ先には森が広がっていて、到着して間もなく「ベリーとキノコ狩りに行きましょう」と誘われ、カッレさんと二人の娘アンナさん、エラさんと出かけることに。訪れたのは8月下旬で、森の中のベリーはわずかに残っている程度で、キノコがあちこちに生えていました。北欧はキノコの種類が多く、秋にかけては食卓にかかせない味となります。

キノコ狩りで悪戦苦闘

私にとってこの時が初めてのキノコ狩り。キノコ狩りと聞いて最初はほんわかとした、のどかな時間を想像していたのですが……これがやってみると、かなりハードなんです。まず苔の茂った森の中は足をとられやすく、カッレさん達のようにさくさくと歩けません。アンナさんとエラさんがどんどんキノコを見つけている一方で、私といえばやっと一つ見つけても「それはもう旬が過ぎてるからおいしくないよ」と一蹴され、「そのキノコは触るだけで危険だからね」と注意され。そうなんです、ベリーと違って、キノコの場合は猛毒をもつ種類もあるので、プロのガイドがいないとできないのです。そうして小一時間ほど歩きまわったのですが収穫はほんのわずか。キノコ狩りってこんなに大変だったのね……と思い知ることになったのでした。

部屋に戻るとちょうど地元の人がとったであろうキノコがたっぷりと入ったかごが扉の前に置かれていました。いや~プロの技ですね。この量をとるには、私は最低でも数日間かかるでしょうね……。カサがひらひらとした黄色いキノコが、フィンランドでとくに好まれているアンズタケ。立派なポルチーニ(ヤマドリタケ)もありますね。ポルチーニはカサの裏側を見て食べ頃かどうかを判断します(アンナさんとエラさんの受け売りです)。ちなみに北欧では一家に一冊キノコ図鑑があるといわれ、子どもの頃からキノコに親しみ、詳しくなっていくそうです。こうして収穫したキノコは肉料理のソースにしたり、スープやマリネにしていただきます。

夕食の時間にはカッレさんの妻ラウラさんの手料理が並びます。敷地内の畑や近くの湖から捕れた食材が中心で、シチューやオーブン料理などフィンランド伝統の味もありました。先ほど森で収穫したばかりのキノコもソテーして食卓の中央に。手前に置かれた小魚のフライは、湖でとれるムイックとよばれる魚で、ワカサギのような味。フィンランドではおなじみで、何度か食べたことのある味ですが、やはりフレッシュなせいかおいしさが格段に違いました!

湖のサウナで至福のひととき

夕飯の後にはお待ちかねの、湖近くに建つサウナ小屋へ連れて行ってもらいました。湖のほとりにサウナ小屋を持つのがフィンランド人の夢だといいますが、目の前に湖が広がるこのシチュエーションはまさに夢のよう。サウナでゆっくり体を暖めたら目の前の湖に入るのですが……気温はすでに20度を下回っていたフィンランドの8月。ドキドキしながら湖に足を入れると、まあ水の冷たいこと!キーンと冷えた水におっかなびっくり入りましたが、一度入ってしまえばこれがすごく気持ちがいい!じゃぶじゃぶと軽く泳いだらまたサウナに戻って暖まり、また湖へ……と何度も繰り返してしまいました。日本でもサウナブームがますます盛り上がっていますが、サウナ好きにはぜひフィンランドで昔ながらの素朴なサウナをぜひ体験をして欲しいです!

北欧らしい体験=サステナブル

この旅をした時にはまだサステナブルツーリズムという言葉は知りませんでしたが、キノコ狩りやベリー摘み、そしてサウナとフィンランドならではの自然と近い暮らしを楽しみ、その土地で採れる食材をいただけるなんて、まさにサステナブルな旅だったのですよね。

90年代から太陽光発電や地熱利用をしていたというロマモッキラ。2021年からは使用する電力は太陽光発電も含めて100%再生可能エネルギーに切り替わりました。

フィンランド政府観光局では、旅行会社や旅する人々がよりサスティナブルな旅を選びやすくなるように、宿泊施設や飲食店、交通機関、アクティビティなどを認証する「フィンランド・サスティナブル・トラベル(FST)」プログラムをスタートさせているのですが、久しぶりにカッレさんに連絡を取ったところ、ロマモッキラでも2年前にその認証を獲得したとのことでした。

ちなみにコロナ禍ではどのような状況でしたか?と尋ねると「当初は人が来なかったのですが、フィンランドの夏季休暇のシーズンになると大勢の人が来ました。これまでは田園地方を旅したことがなかったという方々も増えて、不思議な感じでしたね。最近は海外からのお客様も戻ってきて、日本からもまだ少数ですが、いらしていますよ」とのことでした。

ここで暮らすカッレさん家族との交流も旅の醍醐味。フィンランドっ子らしい夏の過ごし方を体験できますからね!サステナブルで、ゆったりとした時間を過ごしたい方、そして何よりフィンランドならではの暮らしをのぞきたい方には心からおすすめしたい旅のかたちです。

ご紹介したロマモッキラのサイト 
https://lomamokkila.fi/

ロマモッキラで出会った、ビョルン家のわんこさん。ラップフンドと呼ばれるフィンランド原産の犬種で、もともとトナカイの牧畜犬として暮らしを支えてきた犬だそう。番犬としても有能だそうですが、お客さんに対してはとても人懐っこかったです。

次回は町滞在型のサステナブルな旅についてお伝えします。それではモイモイ!(フィンランド語でまたね!)

プロフィール  森 百合子(もり ゆりこ)

北欧5カ国で取材を重ね、ライフスタイルや旅情報を中心に執筆。主な著書に『3日でまわる北欧』(トゥーヴァージンズ)、『北欧ゆるとりっぷ』(主婦の友社)、『いろはに北欧』(学研プラス/地球の歩き方)など。執筆活動に加えてNHK『世界はほしいモノにあふれてる』『趣味どきっ!』などメディア出演や、講演など幅広い活動を通じて北欧の魅力を伝えている。築88年の日本家屋に暮らし、北欧デザインを取り入れたリノベーションや暮らしのアイデアも実践中。 
HP:https://hokuobook.com
Instagram:@allgodschillun

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