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【スローに歩く、北欧の旅#24】食の祭典、FOODEX 2023で北欧の食を探検。②北欧・スカンジナビア編

みなさん、こんにちは。北欧を旅するライターの森百合子です。カボニューにつながる、北欧のさまざまな試みを紹介するこの連載。前回につづいて、東京ビッグサイトで開催されたFOODEX JAPAN 2023で見つけた、北欧のカボニューな食品をご紹介します。

前回バルト編はこちら

オーガニック先進国の底力

北欧+バルト三国のなかで今回もっとも出展者数が多かったのがデンマークです。出展企業だけでなく本国からは食料農業水産大臣も来日して、デンマークの持続可能な食料供給についての講演もされていました。世界のベストレストランに連続して選ばれたコペンハーゲンのノーマを筆頭に北欧のモダン料理を牽引してきたデンマーク。オーガニックや環境、気候に配慮した食づくりでもやはり大きな存在感を示しています。

今回のFOODEXにも、ノーマの名物シェフ、レネ・レゼッピが絶賛したというアイスクリームをはじめ、クリーンな食品に贈られるA.A.テイストアワードを受賞したお茶などグルメでエコな製品がずらりと揃っていましたが……なかでも異彩を放っていたのがこちら。

フムス(ひよこ豆を主原料にした中東や地中海地域の伝統食)やペーストなど色とりどりの瓶がずらりと並んだRømer Vegan(ロエマビーガン)の製品は、すべてプラントベース。ブースに立って試食をすすめていたのが創業者のニールスさんです。お店の歴史を尋ねてみると、ビーガン食品に取り組み始めたのはなんと1972年にまで遡るとのこと!ニールスさんと妻のシグネさんがデンマーク初の健康食品店を始めたのが1977年。当時はまだ珍しかったオーガニックや自然食品を仕入れて販売し、やがては自ら製造にも乗り出し、ブースに並んだ数々のペーストのほかビーガンミートやソフトドリンク、ビール、ベーカリーなど多彩なラインナップを展開するまでになりました。オーガニック&サスティナブル先進国デンマークのなかでも先駆けと言える存在だったんですね。

ラベルには王冠を印したデンマークの赤いオーガニックマークが付いています。ロエマビーガンのユニークなところは大豆を使っていないこと。ベジフードといえば大豆ミートやソイミルクがよく知られますが、「輸入大豆を使うよりも、デンマーク産のえんどう豆を使う方が、よりサスティナブルである」との理由から大豆は不使用。

今回、会場を歩いてオーガニックやサスティナブルを掲げた商品の多さに驚きつつ、「どこがどうサスティナブルなのか?」と注目していましたが、自然と共生するバランスのよい食生活に長年取り組んできたロエマビーガンの製品はひと際強く、印象に残りました。

そして何より、試食したペーストがどれもおいしい!パンやクラッカーにつけて食べたいビーツやカレー味のペーストから、マヨネーズ、バーベキューソースなどの調味料まで本当にどれを食べてもおいしいのです。いつか機会があればぜひ現地で取材をしてみたいものです!

バイキングのお酒もサスティナブルに

もうひとつ北欧らしいお酒もデンマークから出展していました。みなさんはミード酒をご存知でしょうか。蜂蜜から作られるお酒で、バイキングが飲んでいたことでも知られる世界最古のお酒なんです。ぶどうが育たない北欧では、ワインよりも身近なお酒として親しまれ、その歴史は5000年以上前にも遡るといわれます。北欧神話の神々も好んだとされるお酒なんですよ。

デンマークのミード酒を意味するDansk Mjød(ダンスクミード)社のボトルは、ルーン文字(バイキング時代にも使われた文字)をあしらったクラシックなデザイン。「Viking Blod(バイキングの血)」やオーディン神(北欧神話の主神とされる神)の名が付いたボトルもあります。ちなみに「バイキングの血」はハイビスカスを使った赤いお酒で、「オーディンの骸骨」は北欧の人々が好むシナモンとりんごのフレーバーです。

そんなバイキングのお酒もサスティナブルに進化中。もともと中世の世界観を表すためにクレイボトルを使っていたのが、環境のことを考えてリサイクル可能なガラスボトルへと変更しました。ボトルのリニューアルには6年もの時間を費やしたそうです。バイキング船が描かれたラベルや、運送用の段ボール箱にもカーボンニュートラルな製品を使用しており、ミード酒の生産にまつわる電力はすべてソーラーパネルによる発電でまかなっているとのこと。

ヘルシーフードの名脇役は?

例年FOODEXで存在感を見せるのがフィンランド。今回もFOOD FINLANDの看板を掲げ、大きなブースを構えていました。いち早く機能性食品やプラントベース食品に力を入れてきたフィンランドですが、今回気になったのは1939年創業の家族経営ベーカリー、ロステン社のシード(種子)を使ったスナック類。

亜麻仁、パンプキンシード、ひまわりの種といったシード類はそれぞれ鉄分やカルシウム、ビタミンなどを豊富に含み、フィンランドのパンにもよく使われているのですが、そのシード類を主役にしたクッキーや乾パンです。フィンランド食品局では健康のためにナッツやアーモンド、シード類を成人は1日30gほど摂取することを奨励していますが、シード類はプラントベース食品においても重要な素材となっているようです。ぷつぷつとした食感がクセになりそうなクッキーはチョコチップ入りやチリ味など味もさまざま。子どもたちも喜びそうな味でしたよ!

甘い未来を目指すチョコレート工場

さて最後に訪れたのは、スウェーデンのマルメ・ショコラファブリック。スウェーデン第三の都市マルメで生まれ130年以上の歴史をもつ、スウェーデンでもよく知られるブランドです。

北欧らしい色使いのキュートなパッケージにまず目を奪われます。このストライプは今も残るチョコレート工場の煙突を表したもの。ついついデザインに目がいきますが、味もとってもおいしい。大豆やナッツ、グルテン、卵不使用のチョコレートで、EUのオーガニック認証をスウェーデンで初めて受けています。

近年は「SWEET FUTURE」を掲げ、ソーラーパネルを使ったクリーンエネルギーの導入やプラスチック使用量の軽減などサスティナビリティへの取り組みにも積極的。

菓子パンにかかせないスパイスであるカルダモンや、リコリス入りなど北欧らしい味もあり、ミニサイズはちょっとしたギフトやおみやげにもぴったりです。こちらは既に日本に進出していて、オンラインでも購入できるので、気になる方はぜひお試しを。


さて2回に渡ってお伝えしてきたFOODEX JAPAN。北欧企業の取り組みや各製品のストーリーを創業者や作り手の方たちから直接聞くことができ、今後も追っていきたい、応援したい製品にも出会えました。北欧現地でどのように販売され、親しまれているかもまた改めてレポートしていきたいと思います!

デンマークでは猫に話しかける時は「mis-mis-mis(みすみすみす)」、フィンランドでは「kis-kis-kis(きすきすきす)と話しかけるようです。それでは、もいもい(フィンランド語で、またね)!

プロフィール  森 百合子(もり ゆりこ)

北欧5カ国で取材を重ね、ライフスタイルや旅情報を中心に執筆。主な著書に『3日でまわる北欧』(トゥーヴァージンズ)、『北欧ゆるとりっぷ』(主婦の友社)、『いろはに北欧』(学研プラス/地球の歩き方)など。執筆活動に加えてNHK『世界はほしいモノにあふれてる』『趣味どきっ!』などメディア出演や、講演など幅広い活動を通じて北欧の魅力を伝えている。築88年の日本家屋に暮らし、北欧デザインを取り入れたリノベーションや暮らしのアイデアも実践中。 
HP:https://hokuobook.com
Instagram:@allgodschillun

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