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【スローに歩く、北欧の旅#30】世界をリードする自転車都市、コペンハーゲン①

みなさん、こんにちは。北欧を旅するライターの森百合子です。カボニューにつながる、北欧での体験を紹介するこの連載。今回は「世界でもっとも自転車にやさしい町」といわれるコペンハーゲンの自転車事情を取り上げます。知れば知るほど面白いコペンハーゲンならではの取り組みを、2回に渡ってご紹介しますね。


カーボンニュートラル達成の鍵に

自転車の町として世界に知られるコペンハーゲン。起伏の少ない町は自転車で移動しやすく、市内の専用道路は徹底して整備されています。これまでにさまざまな媒体や調査機関が選ぶ「自転車にフレンドリーな都市」ランキングで1位に輝き、2022年には世界最高峰の自転車ロードレース、ツール・ド・フランスのホスト国にも選ばれて注目を集めました。

コペンハーゲンは世界の都市に先駆けて、2025年までにカーボンニュートラルの実現を目標に掲げています。風力発電やバイオ燃料など再生可能エネルギーへの移行や、さまざまな業種でのリサイクルやアップサイクルの仕組みを作るとともに、力を入れているのがグリーンモビリティ。通勤や通学などにおける移動手段を持続可能な方法へと移行させるべく、公共交通の充実とともに自転車の利用を増やすことに重点を置いています。

2025年までに通勤・通学における移動手段の50%を自転車にすることを目標とし、自転車道路をはじめ自転車をとりまく環境整備をさらに充実させてきた結果、10年前には35%ほどだった自転車利用者が2018年には49%となり、2025年までの目標は問題なく到達できるだろうとの見通しです。

健康にも、環境にもいい選択を

デンマーク観光局(Visit Denmark)によると、デンマーク人は平均して一人あたり一日約1.4キロほど自転車に乗り、一日の総走行距離は約800万キロにもなります。コペンハーゲンでは10人中9人が自転車を所有し、寒さが厳しく日照時間が短くなる冬の間でも変わらず自転車を利用する人はたくさんいます。

自転車を選ぶ理由は環境のためであるのはもちろん、健康的でお金がかからず、街中の移動なら車や電車よりも速いと考える人が多いようです。

実際にコペンハーゲンの町を訪れると、まず朝夕のラッシュアワー時の自転車の多さに驚きます。そして走るスピードがかなり速い!自転車レーンは車道と歩道の間にあり自転車マークが描かれているのでわかりやすく、交差点など事故の起こりやすい場所では色分けするなど、より識別しやすい仕様になっています。また利用者も曲がる時や止まる時にはちゃんと手をあげてサインを出すルールが徹底されています。主要な道路では両車線に自転車レーンがあるのがあたりまえで、住宅街など自転車レーンが作れない狭い道路では自動車の走行速度を20〜30キロに制限するなど共存しやすくしています。

コペンハーゲンは市バスのルートも充実しているのですが、バスが止まるのは歩道の手前ではなく、車道と自転車レーンの間です。そのためバスが停車時に自転車レーンに入ってくることはありません。ちなみに慣れていない旅行者がバスを降りてから歩道へわたる際に、自転車レーンでうっかり立ち止まって注意される、という光景もよく見かけます(私も最初の頃、何度かやってしまいました)。バスからの降車時は、後方から来る自転車に注意が必要です。

こうして町全体を通じて自転車レーンが整備され、利用者のマナーが浸透していることもあり、コペンハーゲンでは自転車による深刻な事故件数は10年前と比べて3分の1程度に減ったとのことで、OECDの調査では欧米30都市のなかで自転車による深刻な事故件数がもっとも少ないと報告されています。利用者の満足度が高く、また子どもからお年寄りまで、そして旅行者など町に不慣れな人々も安全に自転車利用ができるような環境づくりもコペンハーゲンの特長といえるでしょう。

町中にはアプリ登録で簡単に利用できる公共のレンタルバイクスポットがあちこちにあるので、旅行者も気軽に自転車を利用することができます。近年は電動自転車も導入されていますし、ホテルや宿泊施設では無料で貸し出していることも。また列車や地下鉄にも自転車を持ち込むことができるので、慣れてくれば広範囲の移動にも便利です。持込可能の車両には自転車マークが大きく描かれていて、車内には自転車を停め置くためのスタンドもあります。

人も荷物も運べる名物自転車

そしてもうひとつコペンハーゲンが誇る自転車の発明があります。それはクリスチャニアバイクと呼ばれる荷台付きの3輪自転車。クリスチャニアとはコペンハーゲン市内にあって自治が認められた特殊なエリアなのですが、エコフレンドリーでヒッピー的ライフスタイルを志す人が多く暮らしています。地域内では独自のルールが設けられ、そのひとつが自動車禁止。カーフリーな社会を目指し、クリスチャニアに暮らすカップルが1970年代に生み出したのが荷台付の3輪自転車、クリスチャニアバイクなのです。

今ではコペンハーゲンの町中で、また国を越えてヨーロッパの町でも愛用されているクリスチャニアバイク。これだけ大きな荷台でしっかりとした作りなので日常の買い出しはもちろん、大きな荷物や家具も入れて運ぶことができます。商品の配達に使っているお店もあれば、子どもたちの送り迎えに使う人もたくさん。コペンハーゲンでは、子どもが2人以上いる家庭の4分の1以上がこのクリスチャニアバイクを所有しているそう。町中をたくさんのクリスチャニアバイクが颯爽と走っているのを見ると、ああコペンハーゲンに来たな!って思うのですよね。

次回は旅行者にも人気の、景観のよい自転車専用レーンや橋など、コペンハーゲンの自転車スポットを中心にご紹介しますね!

コペンハーゲンに暮らす猫のサリーちゃん。人も自転車もおかまいなしにマイペースで過ごしています。それではハイハイ!(デンマーク語でまたね)

プロフィール  森 百合子(もり ゆりこ) 

北欧5カ国で取材を重ね、ライフスタイルや旅情報を中心に執筆。主な著書に『3日でまわる北欧』(トゥーヴァージンズ)、『北欧ゆるとりっぷ』(主婦の友社)、『いろはに北欧』(学研プラス/地球の歩き方)など。執筆活動に加えてNHK『世界はほしいモノにあふれてる』『趣味どきっ!』などメディア出演や、講演など幅広い活動を通じて北欧の魅力を伝えている。築88年の日本家屋に暮らし、北欧デザインを取り入れたリノベーションや暮らしのアイデアも実践中。 
HP:https://hokuobook.com
Instagram:@allgodschillun

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