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【スローに歩く、北欧の旅#31】世界をリードする自転車都市、コペンハーゲン②

みなさん、こんにちは。北欧を旅するライターの森百合子です。カボニューにつながる、北欧での体験を紹介するこの連載。前回に続いて、自転車の町コペンハーゲンの革新的な取り組みについてご紹介します。今回は、自転車に乗ってまわりたいコペンハーゲンのおすすめスポットです。


自転車インフラへの手厚い投資

CO2を排出することなく、環境に負担をかけない自転車は、コペンハーゲンに住む人々にとって日常の足となっています。季節や天候に関わらず通勤や通学に自転車を使う人は多く、コペンハーゲン市では2025年までに自転車利用率50%を目指してさまざまな取り組みをしています。

コペンハーゲン市の発表によると、自転車用インフラの充実とキャンペーンのために2009年から10年間で投資された総額は2億ユーロ。従来の自転車専用道路の拡充のほか、時速20キロで走り続ければ赤信号で止まらずに走れるシステム「グリーンウェーブ」の導入や、一方では町の景観を楽しめる専用道路の建設も進められてきました。中でもコペンハーゲンの顔といえる運河に建設された橋は新たな観光スポットともなっています。

2014年の夏にお披露目となった通称「スネイク」はそのひとつ。市内でもっとも車の渋滞が多いといわれるショッピングモールの前から運河の上を走り抜ける全長約220メートルの高架式の専用道路です。渋滞を避けて移動できるだけでなく、運河を見下ろして走るという唯一無二の体験ができるとあって観光客にも人気のあるこの橋は毎日2万人以上の利用があるそうです。夏場はプールとして開放される運河の上をサイクリストが走り抜けていく様子はなんだか近未来的でもあり、下から眺めるのも楽しいものです。

スネイクを降りた先につながっているブリッゲ橋は、自転車と歩行者専用の橋。2006年の完成で、コペンハーゲンの運河にじつに50年ぶりにできた橋なのです。オープン間もなく当初の予想を遥かに超える利用者があり、その後に続く橋の建設にも弾みをつけました。橋の名前は新聞で公募され、東西のウォーターフロントをつなぐことからデンマーク語で波止場を意味するブリッゲが選ばれました。

新旧の名所をつなぐ橋


17~18世紀の歴史的な建物が残るコペンハーゲンきっての観光エリア、ニューハウン地区と対岸を結ぶインナーハーバー橋も自転車と歩行者専用の橋。橋の上からはニューハウンの町並みや、運河沿いに建つモダンな建築オペラハウスなどが望めて、わざわざ訪れたくなるスポットです。

もともと倉庫街だった対岸の区域には近年、レストランやショップも増えており、自転車で行き来できるのはとっても便利!以前は本数の少ない水上バスを使うか、ぐるりと遠回りするしかなかったのです。ちなみに船の運行時は水平に橋が開くようになっていて、その開閉の様子から「キスする橋(Kissing Bridge)」とも呼ばれています。

アーティストが手掛けた橋も

デンマークとアイスランドにルーツをもち、世界的なアーティストとして活躍するオラファー・エリアソンがデザイン設計したことで話題となったのがウォーターフロントを南北につなぐサークル・ブリッジ。その名のとおり円型のプラットフォームが連なり、船のマストを思わせる5本のポールが立っています。

ここは駆け抜けるというよりは、一旦自転車を停めてゆっくりと景色を楽しみたい橋。対岸にはブラックダイアモンドのニックネームで知られる王立図書館や、ガラスの箱を積み重ねたような複合施設BLOXなどコペンハーゲンを代表する建築が並び、その姿を捉えるのに絶好のスポットでもあります。夜間には円形のデザインが浮かび上がるようにライトアップされるので、対岸からその姿を眺めるのもいいもの。ちなみにこの複雑な造りの橋も、船が通過する際にはちゃんと開橋できるようになっているのはさすがです。

今回、ご紹介した橋はコペンハーゲン観光局(Visit Copenhagen)が紹介している動画でも見ることができます。自転車に乗って町を駆け抜ける気分が味わえますよ!
https://www.youtube.com/watch?v=El_mB-JxMxo&t=1s

デンマーク運輸省はさらなる整備の充実を掲げ、首都コペンハーゲンだけでなく国中に新しい自転車専用道路を設置する計画や、首都圏と29の自治体との間で進む自転車専用の高速道路「スーパーハイウェイ」などサイクリング先進国ならではの構想が次々と導入されています。北欧初のツール・ド・フランス開催国となったことも追い風となり、各国からの自転車政策の視察も絶えないよう。これからますます意欲的に自転車の町として世界をリードしていくことは間違いないでしょう。

自転車で町や自然をまわるサイクリング・ツアーも充実しているコペンハーゲン。昨今はシェアサイクルも増え、町をあげてのグリーンな取り組みに旅行者もますます参加しやすくなりました。じつは私も今年の旅行でついにコペンハーゲンの町でサイクリストデビューをしたんです。シェアサイクルの利用方法や、実際に走っておすすめの場所など、改めてご紹介していきますね!

 コペンハーゲンの街角で見つけた猫イラスト。主要道路から外れて住宅街をいくとこんな発見もあります。それではゴ ライゼ!(デンマーク語でよい旅を!)

プロフィール  森 百合子(もり ゆりこ) 

北欧5カ国で取材を重ね、ライフスタイルや旅情報を中心に執筆。主な著書に『3日でまわる北欧』(トゥーヴァージンズ)、『北欧ゆるとりっぷ』(主婦の友社)、『いろはに北欧』(学研プラス/地球の歩き方)など。執筆活動に加えてNHK『世界はほしいモノにあふれてる』『趣味どきっ!』などメディア出演や、講演など幅広い活動を通じて北欧の魅力を伝えている。築88年の日本家屋に暮らし、北欧デザインを取り入れたリノベーションや暮らしのアイデアも実践中。 
HP:https://hokuobook.com
Instagram:@allgodschillun

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